韓国 職業教育の最新動向|職業高校・ポリテク大学・技能人材政策を解説

韓国ではいま、「どの大学を出たか」よりも「何ができるか」を重視する流れが強まっています。かつては“大学進学が当然”とされてきた韓国社会ですが、近年は職業系高校や技術系学部、専門大学への関心が高まっています。背景にあるのは、AIや自動化の進展による産業構造の変化です。ホワイトカラー業務の一部が自動化される一方で、設備の操作や保守、現場での判断力を要する仕事は依然として人の力が必要とされています。こうした状況のなかで、韓国では「肩書き」よりも「実務能力」に目を向ける評価軸が広がりつつあります。本記事では、韓国の職業教育の動きと、それが日本企業の採用にどのような示唆を与えるのかを整理します。

韓国の職業高校で志願率が上昇している理由とは?進路観の変化

かつては志願率の低下が課題とされていた職業系高校ですが、近年は状況が変わっています。2026学年度には、多くの地域で職業系高校の志願率が定員を大幅に上回りました。光州市では、定員1,794人に対し2,375人が志願し、志願率は132%に達した。全羅北道においても、定員2,700人に対して3,726人が志願するなど、職業教育への関心が全国的に高まっています。複数の地域で定員を上回る志願者が集まり、職業教育が再評価されていることが数字にも表れています。その理由はシンプルで、早い段階から専門技能を身につけられる、企業との接点を持ちやすい、卒業後の就職に直結しやすいなどで、「大学に進むこと」が目的だった進路観から、「将来に直結する力を身につけること」へ。若年層の意識は確実に変わり始めています。

韓国の先就業・後学習モデルとは?働きながら学位を取得する新制度

韓国の職業教育改革を象徴する制度が「先就業・後学習(선취업·후학습)」です。これは、高校卒業後すぐに就職し、実務経験を積みながら大学で学び、学位を取得する仕組みです。従来の「進学してから就職」という順序を逆にしたモデルと言えます。その具体例として、全羅北道と原光大学が連携して新設を進めている「先就業・後学習型 契約学科」が挙げられます。この学科では、農生命・バイオ分野を中心に、地域産業のニーズに直結した実務型カリキュラムが採用されています。学生は地域企業で働きながら大学に在籍し、学位取得を目指す仕組みとなっています。現場で働きながら必要な知識を補強していくため、学歴は“スタート条件”ではなく“キャリアの途中で取得するもの”になります。教育と産業がより密接につながっているこの仕組みは、学歴を否定するものではありません。むしろ、「学ぶタイミングを柔軟にする」という発想の転換です。

韓国ポリテク大学とは?即戦力を育成する公的職業教育機関

大学・専門大学レベルでも実務型教育へのシフトが進んでいます。その代表例が、雇用労働部が設立・運営する韓国ポリテク大学です。全国にキャンパスを展開し、産業現場に直結した教育を行っています。6か月〜1年の短期技能課程や2年制専門学士課程など、目的に応じたプログラムが用意され修了時に「産業学士(専門学士)」の学位が授与されます。近年は製造業に加え、半導体や自動化、IT分野などにも対応を広げています。産業の変化に合わせて教育内容を更新していく柔軟さは、韓国の職業教育の大きな特徴です。

職業高校と大学の連携による先進的取り組み

さらに、大学単体ではなく、職業高校と大学が連携する地域主導型モデルも各地で進められています。その一例が、釜山広域市における取り組みです。釜山教育庁は地元大学と連携し、半導体分野に特化した教育カリキュラムの構築を進めています。これは、地域の基幹産業と教育内容を結びつけることで、将来的に高度な専門技能を備えた人材を地域内で育成し、定着させることを目的としたものです。

このような取り組みは、
・産業ニーズに即した教育設計
・若者の地元定着の促進
・職業教育の社会的評価の向上

といった点において重要な意義を持っています。

韓国では、職業教育を「進学しなかった人の選択肢」や「終着点」としてではなく、成長し続けるキャリアの出発点として位置づけている点が、大学・専門大学における職業系教育の大きな特徴と言えるでしょう。

まとめ:日本企業が韓国の職業教育人材を採用する際の評価ポイント

日本企業の採用担当者にとって重要なのは、「四年制大学卒か否か」という単純な線引きではなく、職業教育を通じて培われた実務経験やスキルの深さ、そして学び続ける姿勢をどのように評価するかという視点です。韓国の職業教育改革は、日本企業に対しても、従来の採用基準を見直し、多様な人材を戦略的に活用する可能性を示していると言えるでしょう。