
近年、日本企業において韓国人学生の採用が着実に広がっています。語学力やITスキルといった分かりやすい能力に加え、「仕事のスピードが速い」「タフで粘り強い」「組織の中での立ち回りがうまい」といった評価が聞かれることも少なくありません。こうした特性は、個人の性格や気質だけで説明できるものではなく、学生時代にどのような教育環境に身を置いてきたかと深く関係しています。その代表例が、韓国の大学教育において中核をなす「팀플(ティンプル)」と呼ばれるチームプロジェクトです。本記事では、韓国人学生の組織適応力の源泉として、このティンプルの実態を整理し、日本企業が採用の場でどのように理解・評価すべきかを考えていきます。
「팀플(ティンプル)」とは何か

韓国大学教育の“標準装備”
ティンプルとは、Team Play(チームプロジェクト)の略称で、韓国の大学では文系・理系を問わず、ほぼすべての学部で導入されています。学生は授業ごとにチームを組み、調査・議論・資料作成・発表までを共同で行います。ここで重要なのは、ティンプルが「補助的な課題」ではなく、成績評価の中心に置かれている点です。
韓国の大学では、ティンプルが成績全体に占める比重が非常に高く、科目によっては評価の30〜50%を占めることもあります。韓国の就職市場ではGPA(大学成績)が重視されるため、ティンプルの出来不出来は、そのまま将来の選択肢に影響します。つまり学生にとってティンプルは、「協力すればよい課題」ではなく、自分の評価を左右する、極めて実践的なプロジェクトなのです。
教室の外でも止まらないプロジェクト進行

ティンプルは授業時間内だけで完結するものではありません。 多くの場合、実質的な作業や議論は授業外で進みます。具体的には、次のような環境が日常的に使われています。
・KakaoTalk(カカオトーク)による常時連絡・議論
・GoogleドキュメントやNotionを使った資料の同時編集・進捗管理
・Everytime(大学コミュニティアプリ)による授業情報・評価傾向の共有
こうしたツール活用は特別なスキルではなく、学生にとっての「当たり前」です。その結果、学生は大学時代から、複数人での業務進行、情報共有、役割分担を前提とした働き方に慣れていきます。
「フリーライダー」を許さない評価制度
韓国のティンプルを特徴づけるもう一つの要素が、匿名の同僚評価(Peer Review)制度です。多くの授業では、プロジェクト終了後にチームメンバー同士を匿名で評価し、その内容が個人の成績に反映されます。評価の対象となるのは、例えば以下のような点です。
・担当業務をきちんと果たしていたか
・打ち合わせや作業に継続的に参加していた
・チーム全体への貢献度はどうだったか
たとえチーム全体の成果が高くても、貢献度が低いと判断されれば、個人の評価は下がります。この環境では、「参加しているだけ」「空気を読むだけ」では通用しません。そのため学生は、自分が責任を持って動くこと、チームとして成果を出すために調整することを、半ば強制的に学ぶことになります。
ティンプルが「組織適応力」につながる理由

こうした環境で大学生活を送った韓国人学生は、入社前から次のような感覚を身につけていることが多くあります。
・成果に対する当事者意識が強い
・意見の対立や温度差があっても、目的を軸に調整しようとする
・個人プレーよりも、チームとしての成果を優先する
これは、ティンプルを通じて「人と一緒に成果を出す難しさ」と「それをやり切る経験」を積み重ねてきた結果といえるでしょう。日本企業が現場で感じる「立ち上がりが早い」「組織に溶け込むのが早い」といった印象は、こうした教育背景と無関係ではありません。
採用面接で意識したい見極めの視点
韓国人学生の履歴書には、多くのプロジェクト経験が記載されていることが一般的です。重要なのは、その経験が形式的なものか、実際にチームの中で役割を果たしてきたものかを見極めることです。そのためには、成果そのものよりも、「どの立場で関わったのか」「課題や衝突があった際、どう対応したのか」といったプロセスを丁寧に聞くことが有効です。具体的なエピソードを交えて説明できるかどうかは、経験の深さを判断する重要な手がかりになります。
まとめ:ティンプルは学生時代の「組織経験」
韓国人学生にとって、ティンプルは単なる大学の課題ではありません。それは、他者と協働し、成果を出すための実践的な組織経験です。この環境で培われた組織適応力や責任感は、入社後の立ち上がりや、チームの中での安定したパフォーマンスとして表れます。KORECでは、こうした教育背景やキャリア形成の文脈を踏まえ、日本企業にとって本当にフィットする韓国人人材との出会いを支援しています。