先日、韓国で18歳未満の子供のいる既婚女性のうち、出産や育児などの負担によって仕事を諦めた経験がある人が22.7%という記事を見つけました。韓国では、子育てなどが要因となり仕事を辞める女性を意味する「キャリア断絶女性」という単語も一般的に使われているようです。一方で、日本就職を望む韓国人学生の中にも多くの韓国人女性がいらっしゃいます。そのような方々が長く日本で働けるよう、日韓企業の女性キャリア形成への取り組みについて、今回の記事でご紹介していきます。
韓国の少子化と女性の社会進出
出所:女性家族部、雇用労働部、「2023年女性経済活動白書」
JETROが2024年9月に発表したレポートによると、韓国の2023年の合計特殊出生率は0.72%(日本1.2%)、出生数は23万人と、それぞれ2022年に続いて過去最低を更新しており、韓国は日本よりも少子化が進んでいる国です。このように少子化が進んだ理由として、若年層の就職難なども挙げられますが、韓国人女性の積極的な社会進出および高学歴化も大きな要因と考えられるそうです。
2000年には韓国人女性の大学進学率が47.6%と約半数であったのが、2023年には78.3%と大きく伸び、OECD加盟国の中でも1位との結果となっています。韓国人女性の高学歴化に伴い、女性就業者数も近年増加傾向で、2011年には1,000万人を突破しましたが、2022年にはさらに増加し約1,216万人となっております。また上記の表からもわかるように、「キャリア断絶」の要因は結婚から育児に原因がシフトしており、「結婚しても働くけれど、出産・子育て時期になるとキャリアを諦める」という構図となっているようです。
韓国は働く女性にとって過酷な環境
韓国人女性の働く現場について調査してみました。
イギリスの時事週刊誌『エコノミスト』が2024年3月に発表した調査によると、先進国29カ国のうち、韓国は「働く女性に最も過酷な環境を持つ国」に12年連続で選ばれたとのことです。
この要因として、妊娠~子育ての期間の女性に対する支援の少なさが考えられます。韓国統計庁によると、18歳未満の子どもを持つ既婚女性のうち22%以上が仕事を辞めた「キャリア断絶女性」であるとのことでした。また、女性の年齢別就業率はキャリア断絶女性達が就業できない妊娠・子育て期間とされる36~39歳頃を過ぎてから、再び増加するM字カーブとなる傾向があります。そのため、50~54歳の女性の就業率は30~34歳の女性の就業率を上回ります。
また、過酷な環境と考えられるもう1つの理由として、韓国国内の性別賃金格差が大きい点が考えられます。韓国では、女性の給与が男性の60.2%にとどまり、OECDに加盟している国の中で性別賃金格差が最も大きい国です。男性と同等の働き方や結果を残したとしても評価がされにくい職場環境であると考えられます。
韓国人女性の社会進出が年々増加している一方で、働く環境のアップデートが遅れており、キャリアを優先するか、子育てをするか、どちらかを選ばなければならないのが現状であり、女性にとって働きにくいと感じる人が多いようです。
女性の年齢別就業率(2012年、2022年)(単位%)
出所:女性家族部、雇用労働部、「2023年女性経済活動白書」
女性が働きやすい環境づくりを行っている日韓企業
女性が長く働けるようにするために、企業はどのように取り組むのが良いのでしょうか。韓国だけでなく、日本でも女性の働き方は課題とされており、女性が活躍できる環境を整えていたり、長期勤務ができる取り組みを行っている日韓企業をご紹介します。
韓国では縁や絆を大事に考えており、産休・育休を取得する女性社員に対する福利厚生は勿論のこと、家族とのイベントや時間を大事にしている制度をアピールしている企業が多いようです。家族とゆっくり時間を過ごせる夏休み期間や金曜日に勤務時間が短くなる制度を導入している企業が多いのが特徴です。また、日本と同様に、テレワークの普及率が低い韓国ですが、出社する妊娠中の社員に対して配慮のあるデスクグッズを準備するなど、妊娠期間中に出社しなければならない状況でも会社がサポートしている点が魅力的に感じました。
一方、日本の企業では、出産後の女性自身に対する制度が多いようです。お昼寝制度は男女世代関係なく利用可能ですが、幼児期の夜泣きや急なトラブルで睡眠時間が少なくなりがちな子育て中の世代から支持があるようです。また、搾乳室や女性特有の悩みに対する薬代を提供するなど、身体的トラブルを根本を改善できるような取り組みを行っている企業がいくつかありました。特に搾乳室の設置については、出産後の女性の体調を守るために必要な空間であり、2023年より厚生労働省が呼びかけを行っております。小さなスペースで良いことや費用が大きく発生しないことから簡単に設置することができるため、導入を検討するのはいかがでしょうか。
ーKBファミリーデー
ーおひるねスペース「GMO Siesta」
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の記事では、韓国人女性の現状と女性が働きやすい環境づくりを行っている日韓企業を紹介いたしました。先進国の中で比較すると女性の働き方やキャリア形成に大きく遅れをとっている日本と韓国ですが、女性自身やその家族を大事にする福利厚生・制度を取り入れることで、韓国人材に対しても長く安心して働ける企業としてアピールになる要素です。ぜひ参考にしていただけると幸いです。
(参考文献)
韓国2023年の合計特殊出生率は0.72、女性の社会進出と高学歴化が背景に 尹政権の少子化対策の現状と課題