
韓国人の成人男性に義務付けられている兵役制度。韓国人を採用する企業の採用担当者が知っておくべき基礎知識を分かりやすくまとめました。韓国人社員のキャリアやライフプランへの理解を深める一助として、ぜひお役立てください。
韓国の兵役制度とは

韓国では、すべての成人男性に兵役の義務が課される「徴兵制度」が存在します。韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は1950年に朝鮮戦争を経験し、1953年に休戦協定が結ばれましたが、現在も休戦状態が続いており、両国間の緊張が完全に解消されているわけではありません。そのため、兵役制度は韓国の安全保障を支える重要な役割を果たしています。
兵役義務が始まる年齢
韓国では、満18歳から28歳までの男性が兵役の対象となります。兵役の義務は、19歳になる年に徴兵検査を受けることから始まります。この検査で健康状態や精神状態が評価され、以下のように1級から7級に分類されます。
- 1級~3級:健康状態が良好で現役兵として入隊。
- 4級:軽度の疾病や障害がある場合、公益勤務(公的機関での勤務)へ。
- 5級:戦時勤労役(有事時のみ動員)。
- 6級:疾病や障害により兵役免除。
- 7級:再検査対象。
入隊時期と調整
多くの男性は20歳前後で入隊しますが、大学生の場合は学業の進捗に応じて兵役時期を調整できます。休学して入隊する人もいれば、卒業後に入隊する人もいます。また、家族を養う必要があるなどの特別な事情がある場合は、入隊を延期することも可能です。
兵役中の業務内容
兵役期間中に担当する任務は軍事訓練だけに限らず、通信、調理、広報、軍事警察、夜間警備など多岐にわたります。また、語学力が優れている場合、駐韓米軍で韓米合同作戦を支援する「KATUSA(Korean Augmentation to the United States Army)」に選ばれることや、DMZ(非武装地帯)ツアーのガイドを任されるケースもあります。
兵役期間と軍種

兵役の期間は配属される軍種によって異なります。
- 陸軍・海兵隊:約18カ月
- 海軍:約20カ月
- 空軍:約21カ月
2018年10月以降、兵役期間は従来より約3カ月短縮されました。
除隊後の予備軍について
2年間の兵役を終えた後、8年間は予備軍に所属します。この期間中は年に数回の召集があり、半日から3日程度、再訓練が義務付けられています。訓練期間は除隊後の年数により異なりますが、韓国の会社には「予備軍訓練、民防衛」という休暇制度があります。そのため、有給を使わずに会社を休み、訓練に参加可能です。また大学も召集時期が重なりやすい場合は、授業が休講になるなどの対応が取られる場合もあります。
満40歳まで続く「民防衛(民防衛隊)」とは
2年間の兵役、その後8年間の予備軍があり、満40歳を迎えるまでは民防衛隊で年に一度簡単な訓練を受けます。この期間を「民防衛(ミンバンウィ)」と言います。民防衛の主な業務は、災害の予防や非常用施設や装備の維持管理、災害があれば警報を鳴らし住民の安全確保、交通整備、人命救助、物資の運搬の支援などです。
韓国人男性と兵役の今

時代に合わせたルール変更
Z世代に合わせた配慮が大分されるようになっているようで、一部では兵役期間中に部隊のコミュニティサイトに写真がアップされ、家族がその様子を見れるなど安心感に繋がるような工夫もされているそうです。また、2019年からは一日の任務終了後に部隊内で携帯電話利用が許可され、家族や友人、恋人との連絡手段も向上したそうです。
同伴入隊で精神的に助け合える
兵役に入隊し家族やパートナーと離れて生活するのは、厳しく辛いもの。そこで検査で現役判定が出た場合には親しい友人や同僚と2人で同時に入隊することが可能です。同じ配属先で除隊まで服務できる制度があります。同伴入隊により、精神的な助けになるため入隊後の軍生活への適応力が向上します。国としても、この結果が軍として向上につながると考えられています。
兵役中の給料について
兵役と聞くと厳しく辛いイメージですが、兵役中は給料が支給され、人手不足などの影響から金額も上がっています。兵役は公務扱いのため国から毎月支給されており、最上位になると日本円で10万円ほどです。実際に兵役期間中には「積立預金(貯蓄)」をする人が多く、軍人のための高金利の「将兵明日準備積立預金」です。服務期間中に個人で積み立て可能な最大金額(約4万3千円)を毎月貯金すると、除隊する時には金利など含めて(約150万円)貯められます。ほとんどの軍人が加入しています。
まとめ
韓国の兵役制度は、国の安全保障を支える重要な役割を担い、多くの韓国人男性が人生の一部として経験します。兵役期間や業務内容、除隊後の予備軍義務など、制度についての理解を深めることは、韓国人を採用する企業にとって重要です。
兵役によるライフプランへの影響を理解し社員のキャリア形成を支援することは、企業と社員の信頼関係を築く大切なステップとなります。韓国の文化や制度への理解を深め、採用活動をより効果的に進めていきましょう。