かつて「安定した職業」として韓国の若者に絶大な人気を誇った公務員ですが、近年その魅力に陰りが見え始めています。年収は一見すると安定しているように見えるものの、大企業や成長産業との比較で見劣りし、若年層を中心に志望者は年々減少傾向にあるといいます。特にMZ世代の若手公務員からは、給与の低さに加えて、画一的なキャリア管理や柔軟性のない働き方、評価制度への不満の声が多く聞かれ、早期離職が相次いでいます。本記事では、韓国公務員の平均年収とその実態や公務員試験の競争率低下、そしてMZ世代の離職動向について紹介します。
公務員の平均年収と所得格差
韓国の国家公務員の2024年度における基準所得月額の平均額は552万ウォン(約55万円)で、これを年収換算すると約6,624万ウォン(約666万円)となります。この金額には、基本給のほか、職務手当、時間外・夜間・休日勤務手当、年次休暇手当、業績賞与などが含まれています。ただし、福利ポイントや非課税収入は対象外であり、手取り額はこれより低くなる可能性があります。
韓国の公務員制度では、職級が1級から9級までに分かれています。このうち、採用試験が実施されているのは9級、7級、5級で、合格した級から任用が始まります。国家公務員の場合、5級は幹部候補(日本の国家Ⅰ種、いわゆる「キャリア官僚」に相当)、7級は国家Ⅱ種、9級は国家Ⅲ種にあたります。地方公務員では、5級が地方上級、7級が地方中級、9級が地方初級に位置づけられています。
職級 | 月額 | 年額 |
9級 | 251万ウォン(約25万円) | 約3,012万ウォン(約302万円) |
7級 | 272万ウォン(約27万円) | 約3,264万ウォン(約328万円) |
5級 | 377万ウォン(約37万円) | 約4,524万ウォン(約455万円) |
2025年度の政府案では、5級以上の公務員の給与を2.5%、6級以下は3.3%引き上げることが発表されています。あわせて、定額食事手当が1万ウォン(約1000円)、役職手当は2万5,000ウォン(約2500円)の増額が予定されています。しかし、労働組合側は「基本給を一律31万ウォン(約3万円)引き上げるべき」と主張しており、政府案との隔たりが埋まらないまま交渉は不調に終わりました。世論の反応も分かれており、「物価上昇を踏まえればやむを得ない」という肯定的な意見がある一方で、「財政負担が大きくなり、民間との均衡も崩れる」といった否定的な声も根強くあるといいます。
공무원 올해 평균 연봉 6624만원…9급 초봉 251만원
[단독] 내년 공무원 봉급 5급 이상 2.5%· 6급 이하 3.3% 인상… 밥값은 1만원 올려 < 종합 < 포커스 < 기사본문 – 공생공사닷컴
“공무원 기본급 31만원 올려달라”…16.7% 인상률 꺼낸 노조 – 머니투데이
“연봉이 6500만원이라고요?”…MZ 공무원들 뿔났다 [관가 포커스]
公務員人気の低下
韓国における公務員の人気は、近年顕著に低下しています。特に国家公務員9級の公開採用試験における競争倍率は、2017年の46.5倍から2024年には21.8倍へと半減し、8年連続で低下しています。
上記の表は、国家公務員9級試験の競争倍率の推移と離職理由です。国家公務員7級の競争倍率については、2022年が42.7倍、2023年が40.4倍、2024年が40.6倍と、9級と比べて変動は小さいものの、横ばいの傾向が見られます。また、2020年以降、採用枠の削減(2023〜2025年度で3年連続の減員)に伴い、志願者数自体も減少していることが指摘されています。
경쟁률 ‘깜짝 반등’ 9급공무원 인기회복?…자세히 들여다보면|동아일보
[2025예산안] 제자리 걷던 공무원 임금, 8년 만에 최대폭 인상 – 경향신문
한때 ‘꿈의 직장’이었는데…공무원 인기 줄어든 이유 물었더니 ‘월급 적어서’ | 서울경제
박봉·격무에 ‘인기 시들’한 공무원…2024년 5·7·9급 경쟁률은? [통계로 보는 행정] | 세계일보
MZ世代若手公務員の離職理由
金銭的不満と将来への不安が最大の理由
近年、韓国の若手公務員の間で民間企業への転職志向が高まりつつあります。全国公務員労組2030委員会の調査によれば、5級に新規採用された若手公務員の約49.1%が「いずれ民間企業へ転職したい」と考えていることが明らかになりました。
特に注目すべきは、その離職理由の内訳です。上記の表にある行政研修院が2023年に実施した「公職生活実態調査」によれば、特に「給与の低さ」は、全体の8割近くに及ぶ最多の離職要因となっており、これは前節で紹介した平均年収が、若手公務員にとって現実的な満足度に結びついていないことを示しています。
さらに、年金制度への不信感も、若年層の離職意向に拍車をかけています。近年、年金の拠出負担の増加や将来的な給付減少が懸念されており、「老後の生活の安定が保証されない」と感じる若手公務員が増加しているそうです。
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組織文化や働き方への不満も
給与や将来不安に加えて、公務員組織の文化そのものへの不満も、MZ世代の離職理由として大きな比重を占めており、以下のような点が指摘されています。
悪性クレーム対応による精神的ストレス
窓口対応などの現場では、悪質な市民クレームに日常的に晒されることが多く、精神的な疲弊が離職の直接的な原因になっています。
年功序列に基づく硬直的な評価制度
成果主義ではなく、「年次が上の者が評価されやすい」という組織文化が根強く、若手の意見や努力が正当に評価されにくい状況が続いています。これにより、自律性を重視するMZ世代のモチベーションが著しく損なわれています。
柔軟な働き方への対応不足
民間では一般的になりつつあるリモートワークやフレックス制度の導入が遅れているため、柔軟な働き方を求める若手には不満が蓄積しています。
閉塞的な職場環境
「報告書作成ばかりで達成感が得られない」といった声も多く、実務と成果が乖離した業務のあり方に対して疑問を抱く若手も少なくありません。
こうした状況のもとで、30代公務員の退職者数も増加傾向にあります。たとえば、2020年には76人だった30代退職者が、2023年には109人へと約43%も増加しており、早期離職の傾向が数字にも表れています。
このように、公務員制度が抱える構造的課題は、もはや一部の職員の問題ではなく、制度全体の持続可能性に関わるレベルの問題として捉えられるようになってきているようです。
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まとめ
韓国では、かつて安定志向の象徴だった公務員職が、若年層にとっては魅力的な職業ではなくなりつつあります。給与やキャリアの不透明さ、働き方の硬直性などが、MZ世代の離職や志望離れにつながっています。
その一方で、日本企業がこれらの背景を理解し、柔軟な働き方への対応やキャリアパスを提示することで、優秀な韓国人材を引き付けるチャンスも広がっています。韓国の公務員制度の現状を把握することは、韓国人材との信頼関係を築く第一歩となるでしょう。