休学期間はマイナスではない!韓国人学生の休学事情

日本と比べて、韓国の大学生が休学する割合は非常に高いです。韓国統計庁のデータによると、大学生の56.7%が休学を経験しており、平均休学期間は2年5ヶ月(男子2年10ヶ月、女子1年3ヶ月)と報告されています。 彼らはどのような理由で休学するのでしょうか?また、日本企業にとって休学経験を経た学生にどのような魅力があるのでしょうか?本記事では、韓国の大学生が休学する主な理由と、その背景について詳しく解説します。

韓国の大学生が休学する理由

韓国の大学生が休学を選択する理由は多岐にわたりますが、主なものとして以下が挙げられます。

学費負担を軽減するための休学

韓国の大学、特に私立大学の学費は高額であり、年間約1,000万ウォン(約100万円)に達することもあります。そのため、家庭の経済的負担を減らすために、多くの学生がアルバイトをしながら休学期間中に学費を貯めるケースが一般的です。長期のアルバイトやインターンシップを行いながら、復学後の学費を確保する学生も少なくありません。また、韓国では基本的に休学中の学費は免除されます。この点が、韓国の学生が休学を選択しやすい要因の一つとなっています。

就職活動の競争に備える休学

韓国の新卒採用市場は非常に競争が激しく、履歴書を充実させることが求められます。そのため、休学中にインターンシップや資格取得、留学などを行い、就職活動での競争力を高めることが一般的です。

インターンシップで実務経験を積む

企業での実務経験は、就職活動において非常に有利に働きます。韓国ではインターンシップが活発で、学生は休学期間を利用して長期インターンシップに参加し、即戦力として活躍できるスキルを身につける場合が多いです。多くの学生が休学期間を利用して長期インターンに参加します。

資格取得でキャリアアップ

就職活動を有利に進めるために、TOEIC、公務員試験、IT関連資格など、さまざまな資格取得を目指す学生もいます。競争の激しい韓国の就職市場において、資格は自己PRの材料として重要な役割を果たします。

語学力向上や海外経験を目的とした休学

韓国の大学生の間では、休学して海外へ留学することが一つのトレンドになっています。特に、グローバル化が進む中で英語や中国語の能力向上が求められ、語学学校への通学やワーキングホリデーを活用する学生が増えています。

海外留学で語学力を強化

アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの英語圏への留学が人気であり、韓国からの留学生数は2008年時点で約22万人と、日本の約8万人を大きく上回っています(最新データではさらに増加傾向)。

ワーキングホリデーで語学+実務経験を獲得

ワーキングホリデー制度を活用し、海外で語学を学びながら働く経験を積む学生も増えています。語学力向上だけでなく、異文化理解や実務経験を同時に得られることが魅力とされています。

兵役のための休学

韓国では成人男性に兵役義務があり、多くの男子学生が大学在学中に軍隊へ入隊します。兵役の期間は通常1年半から2年間であり、除隊後に復学して就職活動を本格的に開始する流れが一般的とされています。

自己成長や視野を広げるための休学

韓国の大学生は、休学期間を自己成長や視野を広げるために積極的に活用しています。​例えば、休学中に長期のバックパッカー旅行やボランティア活動に参加する学生が多くいます。​これらの経験は、社会性を身につけるだけでなく、価値観の幅を広げる貴重な機会となります。​実際、韓国の人気ユーチューバーである달씨(Darcie)さんは、大学在学中に休学し、アラスカへの交換留学を経験しました。​彼女はこの期間中、現地での生活を通じて英語力を向上させただけでなく、異文化理解や自己成長にも大きな影響を受けたと語っています。​このように、休学を通じて得られる多様な経験は、学生たちの人生観やキャリア形成において重要な役割を果たしています。​

日本の大学生との違い

休学する学生の割合の違い

日本:休学は少数派

日本の大学では、休学する学生の割合は約2〜3%と比較的低めです。日本では4年間で卒業するのが一般的で、休学は「特別な事情(留学・病気・経済的理由など)」がある場合に選ばれます。

韓国:1~2年の休学が一般的

一方、韓国では約30〜40%と、多くの学生が大学在学中に1回以上休学を経験します。特にソウルの有名大学では、学生の約半数が休学すると言われています。

就職活動のスケジュールの違い

日本:新卒一括採用でスケジュールが決まっている

日本の企業は「新卒一括採用」を採用しており、多くの企業が大学3年の夏〜4年の春にかけて採用活動を行います。そのため、多くの学生が同じタイミングで就活を進めるため、休学して準備をするケースは少ないです。

韓国:個別の就職活動で休学して準備する

韓国の企業は、日本のような新卒一括採用の仕組みがなく、企業ごとに採用時期が異なります。そのため、学生ごとに就職活動のタイミングもバラバラです。企業は「通年採用」を基本とし、特に大企業はインターンや資格(TOEICなど)を求めるため、準備期間が必要となります。また履歴書の内容を強化するために休学することもあるそうです。

インターンシップの重要性の違い

日本:短期間のインターンが中心

日本の企業のインターンシップは1日~2週間程度の短期間が多く、必ずしも採用に直結しません。そのため、多くの学生はインターンをせずに就活に臨みます。

韓国:休学して長期インターンに参加する学生が多い

韓国では、インターンシップが3か月~1年間の長期が基本で、就職活動ではインターン経験が重視されます。サムスン電子や現代自動車などの大企業では、インターン経験者が本採用で有利とされ、スタートアップ企業や外資系企業も長期インターンを募集しておりm学生は休学してでもインターンを経験し、就活に備えるそうです。「インターン → 休学 → 就活」という流れでキャリアを積んでいくのが一般的です。

日本企業にとっての韓国の大学生の魅力

インターンシップ経験が豊富

韓国の大学生は在学中に積極的にインターンシップに参加します。韓国労働研究院(2022)の調査によると、約60%の学生がインターンを経験しており、そのうち40%は長期インターンを経験しています。これにより、韓国の学生は卒業時には即戦力となるスキルを身につけている場合が多いです。

高い語学スキル

韓国の大学生は語学学習に対する意識が高く、多くの学生が英語や日本語の資格を取得しています。韓国統計庁(2023)のデータによると、約75%の学生が英語資格試験(TOEIC・TOEFL等)を受験し、20%以上が日本語能力試験(JLPT)を受験しています。このため、日本企業にとっても採用しやすい人材といえます。

異文化適応能力とコミュニケーション能力

韓国の大学生は、インターンシップや留学などの経験を通じて、異文化適応能力やコミュニケーション能力を高めています。韓国教育部(2023)のデータによると、韓国の大学生の約15%が学部課程中に留学を経験しており、グローバルな環境への適応力が高い傾向にあります。このように、ギャップイヤーを活用した韓国の大学生は、日本企業にとっても魅力的な人材となる可能性が高いです。

日本企業が韓国人学生を採用する際のポイント

年齢の違いに注意


韓国では、兵役や休学の影響で大学卒業時の年齢が日本よりも高くなる傾向があります。特に男子学生は兵役のために2年間休学することが多く、卒業時の平均年齢は26歳前後になることが一般的です(韓国国防部, 2022)。日本企業が年齢制限を設けている場合、韓国の学生にとって不利になる可能性があるため、柔軟な対応が求められます。

就活のタイミングが異なる

先ほど説明したように、韓国では、大学卒業後に本格的な就職活動を行うのが一般的です。そのため、日本企業が韓国の学生を採用する際には、選考スケジュールの調整が必要になる場合があります。

インターン経験の確認が重要

韓国では、大企業を中心に6か月から1年の長期インターンシップが一般的です。そのため、韓国の学生を採用する際には、どのようなインターン経験を積んできたかを確認することが重要です。実際に、サムスン電子や現代自動車などの大手企業では、長期インターンを経験した学生の採用率が高いと報告されています(韓国経済新聞, 2023)。

日本企業が韓国の休学生を採用する際は、これらのポイントを考慮することで、より適切な人材選びが可能になります。

まとめ

韓国の大学生にとって、休学(ギャップイヤー)はキャリアアップや自己成長のための重要な手段として広く受け入れられています。特に、休学中の学費負担がないことが、多くの学生にとって休学を選択しやすい要因となっています。日本の大学生とは異なるキャリア観を持ち、実務経験の習得や語学力の向上に積極的に取り組む姿勢は、日本企業にとっても大きな魅力となるでしょう。韓国の大学生の休学文化を理解することで、より効果的な採用戦略の構築が可能になります。本記事が、日本企業が韓国の優秀な人材を採用する際の一助としてください!

参考文献: