韓国の「テキストヒップ」現象とは?読書に目覚める若者たち

韓国では近年、若者を中心に読書への関心が高まっています。これは単に情報を得るためだけでなく、自己表現やトレンドとして読書を楽しむ新しい文化が生まれている点が特徴的です。今回は、韓国の若者に見られる読書傾向に着目し、日本との比較を通じて彼らの価値観や思考の背景を明らかにします。

韓国の若者の心をとらえる「読書」

韓国では近年、特に20代の若者を中心に読書への関心が高まっています。これは単に情報を得るためだけでなく、自己表現やトレンドとして読書を楽しむ新しい文化が生まれている点が特徴的です。

韓国のZ世代の間では、「テキストヒップ(텍스트힙/Text-Hip)」という言葉に象徴されるように、読書を「ヒップ(格好いい)」な行為と捉える風潮が広がっています。本を読むこと自体が自身の個性や知性をアピールする手段となり、SNSでは「#북스타그램 (ブックスタグラム)」や「#BookTok (ブックトック)」といったハッシュタグと共に、読んだ本や読書風景を共有する投稿が活発に行われています。

さらに、「チェクク(책꾸미기:本を飾る)」という文化も見られます。これは、お気に入りの本や日記の表紙をシールやイラストでデコレーションする行為で、自分の「気分」を良くし、個性を表現する手段となっています。出版社もこうしたニーズに応え、表紙デザインにこだわった限定版などを発売する動きがあります。

また、かつての学習参考書中心の読書から、最近では哲学書や詩集といった、思索を深めるジャンルへの関心が高まっています。教保文庫の2024年上半期の売上分析では、2024年にノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏の作品が高い人気を維持しているほか、哲学書の売上が前年比で大きく増加するなど、文学性と深い思索を求める傾向がうかがえます。

韓国の20代は電子書籍の利用にも積極的ですが、アナログな紙媒体の書籍を所有し、読むこと自体を楽しむ傾向も見られます。手触りのある紙の書籍に安らぎや集中を求める若者も少なくありません。

TEXT-HIP – 출판N – 한국출판문화산업진흥원

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日韓の読書傾向比較から見える若者の意識と実態

次に、日本の若者の読書傾向と比較することで、韓国の若者の特徴をさらに掘り下げてみましょう。日本の若者の読書傾向に関しては、各種調査から読書離れの傾向が指摘されています。例えば、全国学校図書館協議会の調査(2024年5月)では、高校生の不読者率(1ヶ月に1冊も本を読まない生徒の割合)が48.3%に上りました。また、文化庁の令和5年度「国語に関する世論調査」では、1ヶ月に1冊も本を読まない人が全体の6割を超え、その理由として「スマホ・タブレットなどに時間を取られる」が初めてトップとなっています。

しかし、これは必ずしも「活字離れ」を意味するわけではありません。同調査では、10代・20代の電子書籍利用率が他の世代より高く、特に20代女性では約7割が利用経験があり、電子書籍を主に利用する層も増加しています。オーディオブックの利用も20代を中心に伸びており、通勤時間などを活用した「ながら読書」という新しいスタイルも広がっています。

また、韓国ほど爆発的なトレンドは見られないものの、日本でもSNSが読書のきっかけとなる事例は存在します。TikTokで紹介された本がベストセラーになる現象や、書評系YouTuberが主宰するオンライン読書コミュニティなど、読書を通じた緩やかな繋がりやアウトプットの場を求める動きが見られます。

このように、韓国と日本の若者の読書傾向には社会背景や文化的特性を反映した違いが見られます。以下の表に主な特徴をまとめます。

観点韓国日本
読書への姿勢自己表現、トレンド、「ヒップ」な活動(テキストヒップ文化)。個性や知性のアピール。デジタル媒体での情報収集・娯楽が中心。一部でSNSを通じた緩やかな繋がりや情報共有の手段。
主な媒体紙媒体への愛着と所有欲(チェクク文化、限定版デザインへの関心)、電子書籍も積極利用。電子書籍・オーディオブックへのシフトが顕著(「ながら読書」スタイル)。紙媒体の読書は相対的に減少傾向。
人気ジャンル文学(小説、詩集、エッセイ)、哲学書など、思索を深めるジャンルへの関心増。多様なジャンルに触れるが、全体的な読書時間はデジタルコンテンツに割かれがち。SNSで話題の本が一時的に注目されることも。
SNSとの関連「#BookTok」「#북스타그램」等で読書体験を活発に共有・発信。読書が自己アピールやトレンドの一部。TikTokでの書籍紹介やオンライン読書コミュニティでの交流が見られる(韓国ほど爆発的なトレンドではない)。
背景にある価値観個性・知性の表現、トレンドへの参加意識、デジタルデトックス、内面的な充足感。デジタルでの効率的な情報収集、娯楽としての手軽さ、SNSを介した緩やかな共感や情報交換を求める傾向。

全国学校図書館協議会「学校読書調査」の結果

「月に1冊も本読まない」が6割超:進む読書離れ―文化庁調査 | nippon.com

読書マラソンエントリー者の「読書に関する意識調査」結果

書評YouTuber・アバタローさん主宰 日本最大級のオンライン読書コミュニティ「Book Community | OSIRO

「知的好奇心」をどう活かす?韓国人採用で成功する企業のアプローチ

韓国の若者は、読書を通じて得た知識や考えを積極的に発信し、他者と共有することに長けているといえるでしょう。「テキストヒップ」文化に見られるように、知的な活動を自身の魅力として捉え、アピールすることに抵抗が少ない傾向は、職場での積極的な意見表明やアイデア創出に繋がる可能性を秘めています。

日本企業が韓国人採用を行う際、面接などで最近読んだ本やそこから得た気づきについて尋ねてみるのは、彼らの思考の深さや表現力を知る上で有効な手段となり得ます。例えば、「最近関心を持って読んだ本とその理由は何ですか?」「その本から得た学びや考えは、ご自身のキャリア観や社会への関心にどのように影響していますか?」といった質問を通じて、彼らの内面的な豊かさや論理的思考力、自己表現力を具体的に把握することができるでしょう。

韓国の若者に対しては、読書や学習を通じて自己成長しようとする意欲を正当に評価し、彼らが持つ知識や意見を尊重する姿勢を示すことが重要です。採用の際には、成長機会や学習支援制度、社員が知見を共有できるプラットフォーム(社内ブログ、勉強会など)の存在を具体的に伝えることで、知的な刺激を求める韓国の若者にとって、その企業がより魅力的に映るでしょう。

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まとめ

本稿では、韓国の若者の読書傾向、特に「テキストヒップ」に代表される新しい読書文化と、それが彼らの知的好奇心や自己表現に与える影響について紹介しました。読書を自己成長や個性の表現と捉え、積極的に情報を発信する韓国の若者の姿勢は、日本企業がグローバル人材を獲得し、組織を活性化させる上で重要な示唆を与えてくれます。彼らの知的な探求心や発信力を最大限に発揮できるような成長の機会や環境を提供することが、これからの時代に日本企業が韓国の優秀な若者と共に発展していくための鍵となるでしょう。