日本企業が知っておきたい韓国人材の本音と定着支援のヒント

韓国人をはじめとする外国人社員の定着率は、日本企業にとって大きな課題です。せっかく採用しても早期離職につながれば、企業にとっても本人にとっても損失になります。特に韓国人のMZ世代は「ワーク・ライフ・バランス」や「キャリア形成への納得感」を重視する傾向が強く、日本的な「終身雇用」や「空気を読む文化」だけでは長期的なモチベーションを維持しにくいのが現状です。本記事では、日本で働く外国人の調査データや韓国のMZ世代の特徴を踏まえ、日本企業がどのように定着支援を行えばよいかを考えます。

日本で働く外国人の離職の主な要因

株式会社グローバルパワーが2021年から2023年にかけて行なった、日本在住の外国人材1,300名の退職理由についての調査結果によると、外国人材は「自分が希望する仕事ではない」が最多であり、「給与・報酬が少ないから」、「契約期間が満了したから」との回答が続きました。これは、採用段階での情報不足や、日本特有の評価制度や文化の違いがミスマッチが生じてしまっていると考えられます。特に韓国人材は、給与や評価の透明性を重視する傾向があり、こうしたギャップが早期離職につながることがあると考えられます。

(出典)株式会社グローバルパワー:【調査結果公開】外国人材1,300人の退職理由は?日本人材との比較と要因

韓国のZ世代が望む働き方の傾向

現在、就職活動を行っている多くの韓国人材はMZ世代に当たり、働き方そのものの満足度や日常生活の質を重視する傾向があります。特に、仕事と生活のバランスや上司とのコミュニケーションの取りやすさなど、働く環境や関係性の面での充実が、仕事へのモチベーションや定着に大きく影響するとの記事もあります。ここでは、韓国で働くMZ世代が望む働き方の具体的な特徴を紹介します。

給料よりもワークライフバランス

韓国のZ世代は「워라밸(ワーク・ライフ・バランス)」を非常に重視しています。2024年に韓国経済人協会が発表した調査によると、就職したい企業として最も多く選ばれたのは、MZ世代の36.6%が支持した「仕事と生活のバランスが保障される企業」でした。また、職務満足度の不満要素では「頻繁な夜勤や過重労働」が2位に挙がるなど、MZ世代は高給与や定年保障よりも、個人の生活を確保できる働き方を重視していることがわかります。

コミュニケーションを重視する会社を好む

韓国のMZ世代は、コミュニケーションを重視する会社を好む傾向があるようです。2023年に全国経済人連合会が発表した調査では、MZ世代に好まれる経営陣のタイプとして、①コミュニケーション型、②カリスマ型、③委任型の3つを選ばせたところ、77.9%がコミュニケーション型を選んだことがわかりました。また、企業イメージ向上に必要な要素についての質問でも、37.2%が「コミュニケーションの強化」と回答し最も多くなっています。MZ世代は、チームを引っ張る上司の下で裁量権を行使するよりも、上司との調和を重視した働き方を望んでいるようです。

KORECコラム:韓国MZ世代が望む働き方 より引用

定着のための施策

韓国人材を長く定着させるためには、単に給与や待遇を整えるだけでは不十分であると考えられます。仕事内容や評価への納得感に加え、日常生活や社内での居心地の良さ、キャリア形成の見通しなど、安心して働ける環境づくりが重要となるでしょう。ここでは、日本企業が具体的に取り組める施策をいくつかご紹介します。

コミュニケーション・フィードバック

先にも述べたように、韓国人材は評価や期待を言語化されることを重視するため、定期的なフィードバックや対話の場を設けることが効果的であると考えられます。小さな成果を認める姿勢を示すことで、モチベーションの維持にもつながるでしょう。また、目標や改善点を具体的に共有することで、「自分の努力が評価されている」という実感を持たせることができると考えられます。こうした日常的なコミュニケーションの積み重ねが、長く在籍してもらうことにつながると考えられます。

ビザ・生活支援

在留資格の更新は、外国人社員が離職を検討しやすい節目の一つです。ビザ更新のサポートに加え、家族帯同や住居、医療、税金などの生活面に関する相談窓口を整えることで、安心感を高められるでしょう。韓国と日本では文化が異なる点がそう多くはないですが、それでも異国である日本での生活に不安を抱えやすく、こうした支援があるかどうかで長期勤務への意欲が大きく影響するでしょう。会社が日常生活の不安を減らすことで、仕事に集中できる環境を提供でき、結果として定着率の向上につながると考えられます。

企業風土・文化面のケア

日本特有の「暗黙のルール」や「報連相」文化は、日本語に慣れている韓国人材でも理解をするまで時間がかかる場合があります。そのため、社内交流やメンター制度、言語サポート、上司向けの異文化理解研修などを通じて、相互理解を促進できると考えられます。こうした取り組みによって、韓国人材は「自分は受け入れられている」と実感しやすくなり、心理的な安心感を持ちながら働くことができるでしょう。

評価制度の透明性

韓国人材は、成果主義で昇進や昇給が早いことを期待する一方、日本企業では年功序列や長期勤続を前提とした昇進が多く、評価制度が不透明に感じられやすいです。昇進・昇給の基準が明文化されていなかったり、フィードバックが少なかったりすることもその理由として考えられます。成果やスキルがどのように評価されるかを明確に伝え、年功序列的な仕組みも理由とともに説明するとよいでしょう。また、定期的な面談で具体的な改善点や目標を共有することで、安心感とモチベーションの維持につながるのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。韓国人材に長く働いてもらうためには、まず採用段階から仕事内容の透明性を高め、本人の希望とのミスマッチを防ぐことが欠かせないでしょう。そのうえで、韓国MZ世代が重視する働き方である「ワークライフバランス」や「成長機会」という点を理解し、企業として柔軟に対応できるとさらに良いでしょう。また、ビザや生活面の支援、文化的なケアなども行うことで、安心してキャリアを築ける環境が生まれます。仕事内容の納得感と生活・文化面での安心感の両方を支えることが、定着につながるポイントではないかと考えられます。