
文化や価値観の違いは、日常の細やかな場面に現れます。特にビジネスの場では、挨拶や名刺交換、会議での席順からメールやチャットの書き方まで、国ごとに異なるルールや習慣が存在します。こうした違いを理解せずに仕事を進めてしまうと、意図しない誤解やコミュニケーションの壁を作ってしまう事につながることもあります。逆に、双方の文化を尊重しながら柔軟に対応できれば、信頼関係を築きやすくなるでしょう。
本記事では、日本と韓国の代表的なビジネスマナーを 「名刺交換」「メールの書き方」「コミュニケーションのコツ」「社内チャット」に分けて解説します。
日韓では順番が逆!名刺交換のマナー

日韓のビジネスマナーの違いにおいて、特にわかりやすい違いがある場面が名刺交換です。
名刺を渡す順番
韓国:最も地位の低い人から先に渡す
日本:役職の高い人から先に渡す
この違いは、初めて日本企業に入社した韓国人社員が1番戸惑いやすいポイントです。日本企業では「上位の人を立てる」文化が強いため、研修などで丁寧に伝える必要があります。
名刺を丁寧に扱うことも伝える
また日本では「手順」よりも「丁寧さ」が重視されます。
・名前を指で隠さない
・裏向きで置かない
・両手で受け取り、落ち着いて確認する
こうした細かな所作は、日本ならではの「丁寧さの文化」を体現しており、相手に好印象を与えるポイントです。韓国人社員にも丁寧にこの文化について説明すると良いでしょう。
細やかな教育が必要なビジネスメールのマナー

日韓のビジネスメールは、挨拶・件名・表現方法など多くの点で異なります。この違いを理解していないと、韓国人社員は社内から「強引な人」「急かしがち」と受け止められ、周囲へのコミュニケーションに支障が出る可能性もあります。以下のような例題を使いながら韓国人社員への説明が必要です。逆に日本人社員が韓国企業とやり取りする場合、レスが遅いと「関心がない」と思われてしまうでしょう。それぞれの文化の違いを理解した上で対応すると良いでしょう。
挨拶の特徴
韓国:簡潔でフランクな挨拶が多く、日常会話に近い表現も許容される
日本:「いつもお世話になっております」など、敬語を巧みに使い分け、相手に不快感を与えないことを重視
件名の丁寧さ
韓国:「【緊急】打ち合わせ日程変更」など、内容が一目でわかる直接的な件名
日本:「お打ち合わせ日程調整のお願い」など、配慮を込めつつ簡潔に
相手への要求濃度
韓国:直接的に「ご確認お願いします」「早めに返信ください」と書くことが一般的
日本:間接的な表現が好まれる(例:「ご検討いただけますと幸いです」)
返信スピードの違い
韓国:即時のレスポンスが基本とされ、1日以上待たせてしまうと「誠意が足りない」と取られることもある。
日本:内容によってはスピーディーはレスポンスも必要だが、韓国ほどのスピードさは重視されておらず、内容をよく確認した丁寧な返信内容を求められる。
社内チャットのマナー
近年はチャットツールの活用も一般的になりました。チャットは迅速なやり取りやカジュアルな情報共有に適しており、リアルタイム性が高く、スタンプなどでニュアンスを伝えやすいのが特徴的なツールですが、韓国と日本ではメール同様そのスピード感とカジュアルさにマナーの違いがあります。
韓国:Slackやカカオトークを利用。レスポンスは即時レスポンスが基本
日本:メール文化が根強く残り、チャットでもフォーマルな表現を保つ傾向にあり
「チャットだからと会話調を使いすぎない」「即レスを求めない」など事前に韓国人社員に伝えておく必要がありそうです。
韓国人社員へ伝えておきたい注意ポイントー日本企業におけるメールマナー
・「お疲れ様です」は必須ー文頭につけるだけで角が立たない“魔法の一言”
・急かさない配慮ー何度も催促すると「圧が強い」と思われる
・敬称を忘れないー仲が良くても「○○さん」「○○課長」と呼ぶのが自然
・「チャットだからカジュアルでいい」という感覚は、日本のビジネスシーンでは誤解を招きやすいので注意が必要
両国の特徴を理解したコミュニケーション

両国の会話スタイルは「直接性」と「配慮」のバランスに違いがあります。韓国では意見を率直に伝える傾向があり、会議などでも自分の考えを積極的に述べることが一般的です。一方、日本では和を重んじ、相手の意見を尊重しながら慎重に発言する傾向にあり、上司や年長者への敬意を示す敬語の使い方や、場に応じた立ち居振る舞いも重視されます。例えば、会議で意見を述べるときに韓国では「これは良くない」と断言することが評価される一方、日本では「改善の余地があるかもしれません」と柔らかく表現する方が好まれます。相互理解を深めるには、「明確さと丁寧さを両立させる」ことが重要です。
韓国:「はっきり伝える=誠意」とされるため、遠回しな表現は「自信がない」と誤解されやすい=明確さ・率直さ
日本:ストレートな物言いはきつく感じられがちで、クッション言葉や婉曲表現を重視=丁寧さ・配慮
まとめ
韓国と日本のビジネスマナーの違いを理解しておくことで、無用な誤解を避け、円滑なビジネス関係を築くことができます。韓国人社員に対して「日本ではこうする」という前提を丁寧に伝え、双方が安心して仕事に集中できる環境を整えることが大切です。日常業務中の様々な場面で、今回の記事に記載してある以外の細かな文化や認識のズレは出てくるでしょう。その都度、マニュアルに追記するなど経験を蓄積していき、共有することでスムーズな関係構築に役立つでしょう。