
韓国では「自分を売り込む」スキルが重要視されるため、面接では積極的にアピールする人が多い傾向があります。日本人とは異なる国民性なので、面接時に実力以上に見えてしまうこともあります。本記事では、韓国人候補者の面接時に「本当に実力があるのか」を見極める方法と、採用後の定着率を向上させるポイントについて解説します。
韓国人の自己PR力の背景

韓国の就活文化では、自己PRやプレゼンテーション能力が非常に重視されます。その背景には、以下のような要因があります。
新卒の就職活動でも経験を重視
韓国では日本のように4月一斉入社の習慣が無く、休学して会社でインターンをしたり、卒業後に半年から1年間就職準備のためにスクールに通う人もいます。また、学生時代はグループ活動など自身の意見を言う場が多く設けられており、大学入試や就職活動での「スペック(資格や経験)」をアピールすることが重要視されます。
競争の激しい就職市場
韓国の新卒就職市場は非常に競争が激しく、時には数百倍の倍率になることもあります。参考に、韓国で一番就職が難しいと言われている大企業のサムスンは、例年11~15名を採用します。(参考 サムスンの選考情報で知っておくべき学歴と採用人数 | キャリアパーク[就活])応募者は限られた機会を最大限に活用しほかの応募者と大きく差をつけるために、自己アピールを徹底的に磨く傾向があります。
成果主義の企業文化
韓国企業では成果主義が強く、入社後も実績を積極的にアピールすることが求められます。そのため、就職活動時から自己表現を意識する文化が根付いています。
韓国での面接方法
以下は韓国政府の公式ホームページを参考にした、面接でよく聞かれることや面接対策のポイントです。志望動機や長所短所、自己㏚等は日本企業でもよく聞かれる質問事項ですが、大きな違いとしては「応募した仕事に就くためにどのような準備、努力をしたのか」や「仕事と大学の専攻が一致しないのになぜこの業種を選んだのか」等です。韓国企業が面接時に重視するポイントの1つとして「大学の専攻と業種が一致しているか」があります。日本では就職時にあまり大学の学科を重視せず、むしろ成績等を見るケースもありますが、韓国では学科と志望業種の一致を面接時に確認するケースが多いです。
面接で韓国人候補者の実力を見抜くポイント

仕事に対する積極性をチェック
「今までのキャリア・学生生活で困難だった出来事は?」「普段はストレスをどのように管理しているのか?」という質問をすることで、ストレス耐性や仕事に対する向き合い方を読み取れます。
スキルや問題解決能力をチェック
仕事に対する専門的な知識や学習が速く成長が見込めるのか、という点も大事なポイントです。口頭での自己PRが得意な人でも、実際の業務スキルで会ったり業界に対して全く知見がないということもあります。面接だけでなく、ケーススタディーなど業務に関連する課題を出し、問題解決力や思考力を評価するとよいと考えられます。
組織における協調性とリーダーシップ
「学生時代に集団で協力した経験があるか」は韓国企業の面接に頻出の質問です。韓国の大学では팀플と言って直訳すると「チームプロジェクト」日本でいうグループワークが頻繁にあります。数人で1チームになり教授が出した課題についてそれぞれの班で協力して話しあいパワーポイントにまとめて発表するというものです。
採用後の定着率を上げるためのポイント

韓国人社員が長く活躍できて長期的に定着してもらう環境を作るために意識すべきポイントを紹介します。
文化の違いを理解し、適切なフォローを行う
日韓文化の違いを理解し、韓国人の一般的な文化、習慣について頭に置いておくと仕事が進めやすいでしょう。過去の記事でも紹介しているのでぜひ目を通してみてください!
[★KOREC記事:日韓文化の違い] 日本人から見た韓国人の考え方と文化について | 株式会社ビーウェル
- ・ビジネスであっても本音をぶつけ合い、お互いの価値観を大事にする
- ・フィードバックのスタイル(韓国では直接的、日本では遠回し)
- ・パリパリ文化(韓国企業の意思決定の速さにもあらわれています。)
といった違いを理解し、適切にフォローすることが大切です。
明確な評価制度や将来性のあるキャリアパスを提示
韓国企業は比較的成果主義が浸透しており、従業員の成果を適切に評価し、収入にも影響するケースが多いです。そのため、完全な成果報酬までとはいかずとも、昇進・昇給の基準を明確にし、成果をしっかりと賃金に反映させることが重要です。日本労働政策研究・研修機構の報告書によれば、韓国企業は業績評価に基づく賃金の格差を制度上だけでなく、実際の運用でも明確に適用しており、評価の高い者と低い者の賃金に一定の「格差」を設けています。(参考 資料シリーズ No.53 成果主義賃金制度の日韓比較|労働政策研究・研修機構(JILPT))
このような明確な評価基準とフィードバックの提供が、従業員のモチベーション向上につながるとされています。
コミュニケーションを頻繁にとる
韓国から日本に移住して働くということは、業務以外の面でも大変なことや悩みなどを彼らは抱えることでしょう。従業員と頻繁にコミュニケーションをとることにより従業員の不満が改善され、離職率が減少するというデータもあります。例えば、HR総研の調査では、若手人材の離職防止策として「社内コミュニケーションの活性化」を実施している企業が46%に上り、効果的な対策として認識されています。また、厚生労働省の報告によれば、従業員のエンゲージメントが高い企業ほど離職率が低下する傾向が確認されています。
(参考リンク 大企業の6割が「若手人材の離職」に課題あり、離職防止に効果があるポイントとは? /HR総研:若手人材の離職防止に関するアンケート 結果報告 – HR総研 | 人事のプロを支援するHRプロ)

これは韓国人社員でなくとも共通することですが、離職率を下げるためには、メンター制度を導入したり、定期的な1on1ミーティングを実施するなどの取り組みが有効です。
まとめ
いかかでしたでしょうか?競争の激しい韓国の就活では新卒であっても経験を重視することが多く、面接でほかの候補者と差をつけるために自己PRで能力をアピールすることが求められています。韓国人採用を考えている場合は、面接で候補者の能力を明確に見抜き、入社後も適切に評価していく必要があります。成果を正しく評価している姿勢を伝えたり、頻繁なコミュニケーションを取りながら、定着率を高めていくことが大事です。