
韓国では、若年層の「就職空白期(就職浪人期間)」と雇用ミスマッチの深刻化が社会的課題となっています。韓国経済人協会(韓経協)が2025年に実施した調査によると、15~29歳の青年1,020人のうち66.7%が就職空白を経験しており、そのうち39.0%が6カ月以上にわたって就職が決まらない状況にあると回答しました。つまり、10人中7人が何らかの就職空白を経験している計算となります。
本記事では、このような就職空白期の背景として、賃金格差、就職までの期間と学歴の影響、産業構造の変化による雇用シフト、日韓間の雇用ミスマッチという視点から現状を紹介します。
賃金格差の日韓比較

韓国では、大企業や公的機関への就職を希望する若者が多くなっています。その背景として、企業規模による賃金格差や雇用条件の違いがあります。2024年のJETROの報告によると、大企業を「100」としたときの中小企業の賃金水準は、日本よりも韓国の方が顕著に低くなっています。
| 日本(2023年) | 韓国(2023年) |
| 大企業(1000人以上):100 | 300人以上企業:100 |
| 中企業(100−999人):90.9 | 30−299人企業:75.9 |
| 小企業(10−99人):85.0 | 5−29人企業:67.5 |
| 5人未満企業:49.3 |
(出典:JETRO「韓国経済の企業規模別賃金格差」2024年3月)
日本では、大企業と中企業の賃金差は 100 − 90.9 = 9.1%、大企業と小企業の差は 100 − 85.0 = 15% です。中小企業でも賃金水準は比較的高く、大企業との差はそれほど大きくありません。一方で、韓国では、大企業と中企業の差:100 − 75.9 = 24.1%、大企業と小企業の差:100 − 67.5 = 32.5%、大企業と超小企業の差:100 − 49.3 = 50.7%となり、大企業と中小・零細企業の賃金差が非常に大きく、特に5人未満の企業では大企業の半分程度しか支給されていないことがわかります。
このように、韓国では企業規模による賃金格差が日本よりも大きく、さらに福利厚生や労働条件も大企業が優位であるため、若者が大企業・公的機関に集中する傾向が強まっています。
就職までの期間と学歴の影響

韓国雇用情報院の調査(2024)によると、20代新規学卒者が最初の就職先に入社するまでの平均期間は17カ月に達しています。学歴が高いほど期間が短い傾向にありますが、それでも多くの学生が長期の就職準備を強いられています。
| 卒業後すぐに入社 | 20.6% |
| 1〜6ヶ月未満で入社 | 28.8% (最多) |
| 6〜12年未満 | 10.5% |
| 1〜2年未満 | 12.9% |
| 2〜4年未満 | 15.6% |
| 4年以上 | 11.7% |
(出典:韓国雇用情報院「新規学卒者の就職状況」2024年)
一方、日本では「新規学卒一括採用」が定着しており、約9割の学生が卒業年度の6月までに内々定を得ています。韓国では随時採用が主流で、「経験者採用」の比率が増加しているため、企業が求めるスキル水準と若者の経験との間にギャップが生じています。また、韓国の大企業上位100社における20代社員比率は、2022年24.8% → 2023年22.7% → 2024年21.0%と減少。これは、若手採用の減少や、経験重視傾向の強まりを示しています。
産業構造の変化と青年雇用への影響

韓国では、製造業などの伝統的産業の雇用が縮小し、情報通信業や専門・科学技術サービス業などの知識集約型産業へのシフトが進んでいます。JETRO(2025年1月)の報告によると、卸売・小売業や建設業などの労働集約型産業では人員減少が続く一方で、IT分野を中心に雇用が拡大しています。
また、コンビニや飲食店でのキオスク(自動注文機)導入など、省人化技術が普及したことで、若者の初職・アルバイト機会が減少。結果として、15~29歳の就業率は46.1%(前年より0.4ポイント低下)となりました。こうした産業構造の変化は、希望する職種や条件を満たす雇用機会を減らし、若年層の雇用不均衡をさらに広げています。
まとめ➖日本企業と韓国人材のミスマッチと課題

日本企業と韓国人材の間には、採用観の違いによるミスマッチが存在します。韓国では「スペック(実績・スキル)」を重視するのに対し、日本企業は「熱意・人柄・志望動機」を重視する傾向があります。この違いを埋めるためには、双方の歩み寄りが必要です。
韓国産業人力公団のデータによると、海外就職先として米国が日本を上回った一方で、就職後の定着率は日本が79.5%と高く、米国(47.2%)を大きく上回ることが分かっています(韓国職業能力研究院, 2024)。これは、日本の安定した職場環境や丁寧な教育体制が韓国人材に高く評価されていることを示しています。したがって、日本企業が韓国人材のキャリア志向や価値観を理解し、柔軟に採用体制を整えることが、今後のグローバル人材獲得の鍵となるでしょう。
(出典:韓国経済人協会「2025共生協力採用博覧会」調査、韓国雇用情報院、JETRO各種報告、韓国職業能力研究院 2024)
:参考資料
file:///Users/takayaharuna/Downloads/KJ00007099342.pdf