韓国の“名前文化”を知る注意したい職場での呼び方のマナー

韓国の芸能界では、同姓同名の俳優が多数存在するため、ニュースや検索で混同されることも少なくありません。K-POPアイドル界でも、同じ名前のメンバーが集まって歌を披露する企画が行われるほどで、「ジェヒョン」「ジミン」「ユナ」といった共通の名前が多く見られます。

これは韓国の名前文化の特徴の一つで、名字の種類が限られ、下の名前のバリエーションも多くはないため、同じ名前が自然に生まれやすいのです。

本記事では、日本とは少し異なる韓国での名前の文化や、その認識の特徴についてご説明します。さらに、日本企業で韓国人人材と働く際に知っておくと役立つ、具体的な呼び方のポイントも紹介します。

韓国の姓名に関する基本情報

韓国の名前は「姓+名」の順で構成され、姓は一文字、名は二文字が一般的です。古くから家族や地域の血統を重んじる文化があり、同じ姓でも本貫(先祖の出身地)によって区別されます。

また、結婚しても夫婦で同じ姓を名乗らないなど、名前に対する価値観にも日本とは異なる部分が多く見られます。ここでは、そんな韓国の「名前」にまつわる基本的な文化や背景を紹介します。

最新名前ランキング

(出典:韓国大法院の電子家族関係登録統計システム)

韓国では、最高裁判所が運営する電子家族関係登録統計システムで、出生届に基づく名前の統計が毎月公開されています。2025年9月の全国統計では、男の子の1位が「ドユン」、女の子の1位が「ハリン」で、それぞれ全体の約8%を占めており、上位の名前に人気が集中していることが分かります。一方、日本では2025年に男の子の1位となった名前は「碧」で、全体の約1%ほどと推定できます。そのため、日本人にとっては韓国人の名前が似ていたり、同じような名前の人が多いと感じられるのかもしれません。

珍しい名字とは?

韓国では、名字ランキング上位のほとんどがキム(김)やパク(박)、リ(이)といった1文字であるように、1文字の名字の方がとても多いです。一方で、珍しい名字には二文字のものもあり、例えばマンジョル、ソボン、カンジョンなどがあります。

韓国で人口の少ない名字ランキング

順位名字全国の人数
1位マンジョル(망절)9人
2位ソボン(소봉)18人
3位ジョ(저)48人
4位サム(삼)49人
5位カンジョン(강전)51人

(出典:日曜詩歌)

名前を聞く際は、出身地も聞くことも

韓国では自己紹介のときに「キメのキムです」「チョンジュのイです」と、出身地+名字で名乗ったり、「どちらのパクさんですか?」と聞くことがあります。これは「本貫(ボングァン)」と呼ばれ、先祖の出身地を示すものです。韓国では同じ名字を持つ人が非常に多いため、本貫によって家系を区別する文化が根付いているようです。こうした「出身地+名字」での名乗り方は、単なる形式ではなく、自らのルーツや家族の歴史を尊重する気持ちの表れと言えるでしょう。

よくある苗字と地域の例

苗字地域
キムさんキメ(金海)
イさんチョンジュ(全州)
パクさんキョンジュ(慶州)

結婚しても名字は変わらない

韓国では、結婚しても夫婦が同じ姓を名乗ることはありません。法律で「夫婦別姓」と定められており、結婚後もお互いの姓をそのまま使います。

これは、儒教の教えが今も文化の根底にあるためと考えられます。韓国では「血のつながり」をとても大切にしており、姓は「家系」を象徴する大事なものと考えられています。先に述べたように、韓国では先祖の出身地(本貫)を意識しており、自分の姓やルーツを守ることが“家を大切にする”という考え方につながっていると言えるでしょう。

改名に対するハードルは低い

韓国では改名が比較的、身近な存在で、特に2005年の最高裁判所の判断をきっかけに手続きが容易になり、その後、申請件数は大きく増加したそうです。2024年の電子家族関係登録統計システムによると、83276件の申請があり、そのうち約8%に当たる622件が「ジアン」という名前に改名したそうです。

改名の理由はさまざまで、「運勢を良くしたい」、「名前の響きを柔らかくしたい」、「芸能活動に合う名前にしたい」など、日本よりも気軽に名前を変える文化が根付いているようです。

名前の付け方と漢字の関係

韓国の名前は、姓・名ともに漢字で表すことができます。名付けの際には、生年月日や干支、五行(木・火・土・金・水)などの運勢に基づいた占いが関わることが多いようです。また、家系や先祖のルールを重視して、漢字の画数や響きのバランスを考えて名付けられる場合もあるとのことです。

芸能人の名前に漢字の例

芸名本名推測される名前の由来
BLACKPINK ジスキム・ジス/金智秀「智」は賢い、「秀」は優れた▶︎知恵があり優れた人になるように
俳優 コン・ユコン・ジチョル/孔地轍「地轍」は“地に刻まれた車の跡”▶︎しっかりと地に足をつけて進む人

職場での名前の呼び方

韓国では、名前や呼び方にまつわる文化が日本とは少し異なります。ここでは、韓国の職場で一般的な名前の呼び方やマナーを紹介し、日本の企業で韓国人人材と働くときに役立つ具体例も交えて解説します。
新人や若手、名前が被った場合、先輩や役職者といった状況ごとの呼び方を知っておくと、スムーズなコミュニケーションにつながるでしょう。

以下では、韓国人のパク・ミニョンさんとパク・ソジュンさんが日本の企業で働いている場面を想定し、呼び方の例を紹介していきます。

①韓国人人材が新人・若手の時

例:ミニョンさん、ソジュンさん

韓国では、名字が同じ人が多いため、会社でも下の名前で呼ぶのが一般的です。
そのため、まだ役職についていない新人や若手の韓国人人材の場合は、名前+さんで呼ぶのが自然で失礼のない呼び方と言えます。

フルネームで呼ぶこともできますが、普段は下の名前で呼ばれる文化に慣れているため、距離感がありすぎる、少し堅苦しいと感じられることもあります。

② 韓国人人材の名前が被った時

例:パクちゃん、ミンちゃん、ジュンさん

韓国では、職場や学校で同姓同名になることもまれにあります。
ただし、日本のようにあだ名で呼ぶ文化はあまりないため、名字や名前、あるいはフルネームが被っても、あだ名で区別することはほとんどありません。

そのため、会社内で同姓同名の韓国人人材がいる場合は、あだ名で呼ぶときに必ず事前に本人に確認するのが安心です。

③ 韓国人人材が先輩・役職者の場合

例:

距離感のある上司の場合▶︎パク部長、パク専務

親しい間柄の上司の場合▶︎ミニョン次長、ソジュン課長

韓国では、役職や年齢に基づく上下関係が重視されるため、先輩や役職者には名字+役職名で呼ぶのが最も多いです。親しい間柄や部署内の雰囲気によっては、下の名前+役職名でも問題ありませんが、フルネーム+役職で呼ぶと堅苦しい印象や距離感を感じられることがあります。

まとめ

いかがでしょうか。韓国の名前や呼び方の文化を理解しておくことで、職場でのコミュニケーションがよりスムーズになります。新人や若手、同姓同名、先輩や役職者など、状況に応じた呼び方を知っておくと、韓国人人材との関係も円滑に築くことができるでしょう。名前の背景や文化を尊重しつつ、距離感や立場に合わせて呼び方を選ぶことが、信頼関係をつくる第一歩と言えるでしょう。

参照記事

KOREC記事:韓国人の姓名について

朝鮮日報:ユナ、スヒョン、ミンジョン…同じ名前を持つスターたち

ベネッセコーポレーション:[国内最多16.6万人調査]たまひよ 赤ちゃんの名前ランキング2025 女の子「翠」が初の1位、男の子「碧」が2年連続1位!

FNNプライムオンライン:約16.6万人調査 赤ちゃんの名前ランキング発表 男の子「碧」女の子「翠」がトップ ベネッセ調べ

日曜詩歌:国内“珍しい名前”トップ5、5位は51人、1位は?

Yahoo!ニュース:【日本人には謎】韓国ドラマによく出てくる不思議な行動!Part359:結婚しても名字はそのまま?他

朝鮮日報:整形と同じ感覚で改名する人たち、10年で韓国人146万人が改名

lawtalk:「おなら」さんはどのように改名したのか? 改名を心配するなら必ず知るべき法律常識