大学生で株や投資は当たり前⁉︎韓国の金融教育と資産管理

金融教育や資産形成への関心が高まっている現在、実際に投資などの行動に移している日本の若者はどれぐらいいるのでしょうか。株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが2022年に行った調査によると、Z世代の半数以上が「将来の資産形成」に関心を持っていると回答したものの、実際に投資を始めている割合は約10%にとどまりました。

一方、韓国では若者の投資熱が高く、資産運用や消費トレンドにも独自の特徴があります。では、韓国人は「お金」とどう向き合っているのでしょうか? 本記事では、韓国社会における金融リテラシーや資産管理の特徴を探り、日本との違いにも触れながら紹介していきます。

韓国人はお金好き?

〇 人生で最も大切なものは「お金」?!

韓国ドラマや映画を見ると、お金をめぐる話題が頻繁に登場します。これにより、韓国人はお金に対する関心が高いと感じることも少なくないでしょう。

ピュー・リサーチ・センターが2021年11月18日に公開した「人生に意味を与えるものは何か(What makes life meaningful)」というレポートによると、「人生に意味を与えるものは何か」という質問に対し、韓国では「お金」が1位に挙げられました。さらに、他の調査でも、韓国人のお金に対する熱望が世界平均の2倍以上であることが明らかになっています。

〇 韓国人がもつ「お金」のイメージ

韓国では、お金は「富と成功の象徴」として強いイメージを持っています。不動産の所有や高所得の職業は社会的地位の指標となり、人生の成功を表すステータスとされています。一方、日本では節約や倹約が美徳とされる文化が根付いています。また、「価値のある消費」を重視する傾向があり、単なる資産の量ではなく、どう活用するかに焦点が当てられています。

韓国ではさらに、お金が「共同体での関係維持の手段」としても重要です。例えば、奢る文化がその象徴です。これは儒教の影響もありますが、人間関係を築き、維持するためのお金の使い方として捉えられています。

投資が当たり前~韓国の若者と金融教育

〇 IMF危機から始まった経済教育への関心

韓国の金融リテラシーと投資行動は1997年のIMF危機がきっかけとなって大きく変化しました。IMF危機により国の経済が破綻し、多くの企業が倒産、失業率が急上昇したことで、国民の間で「経済知識と資産管理の必要性」が強く認識されるようになりました。

それ以来、経済教育への関心は継続的に高まり、子供向けの経済セミナーや家庭での金融教育が一般的になり、より積極的な資産運用への意識が根付いています。

〇 早期から始まる投資教育

韓国では、金融教育を制度化する動きも活発です。2022年には高校教育で「金融と経済生活」という科目が選択科目として追加され、2025年には普通科目として正式に導入される予定です。この科目では、基本的な経済の仕組みだけでなく、実践的な投資知識や資産運用の方法まで学ぶことができます。また金融機関も若年層への投資教育に力を入れています。韓国の主要銀行は、未成年者が少額から投資を始められる専用アプリを近年積極的に開発・提供しています。これらのアプリでは、株式投資のシミュレーションや、実際の株式購入まで可能で、保護者の管理のもと、お小遣いを使って投資を体験できる仕組みが整っています。

〇 若者の投資への積極的な姿勢

このような教育環境を背景に、韓国の若者たちは投資に対して積極的な姿勢を見せています。韓国金融投資協会の調査によると、20代の約40%が何らかの投資経験を持っており、その割合は年々増加傾向にあります。

特に、個別株投資やETF(上場投資信託)への関心が高く、SNSを通じて投資情報を活発に共有する文化も定着しています。

大学では「投資」関連のサークルも人気が高い様です。さらに、大学の一部の金融の授業ではアプリを用いた模擬(シミュレーション)投資も実施されます。優秀な成績を収めた学生には奨学金が付与されるなど、実践的な投資経験を積める機会が豊富に用意されています。

このように、韓国では経済危機を教訓として、若いうちから投資や資産形成について学ぶ機会が充実しており、それが若者の投資への高い関心と実践につながっているようです。

韓国会社員(社会人)の資産管理

〇 韓国会社員が利用している制度

韓国の会社員たちは、様々な制度を組み合わせて資産形成を行っています。資産運用の観点からは、一般的な企業では「株式報酬インセンティブ」が主流であり、その他、株式買収選択権(Stock option)や成果条件付株式(Restricted stock, RS)等が導入されています。特に近年は、ベンチャー企業での制限を解消できる成果条件付株式の導入が増加傾向にあります。例えば、IT大手のネイバーは2022年に譲渡制限条件付株式(RSU)制度を導入し、経営成果に応じて無償で株式を支給するインセンティブを設けました。

また、日本と同様に確定給付企業年金(DB型)と確定拠出年金(DC型)も一般的ではありますが、韓国では各銀行が提供する豊富な積立型金融商品が高い人気を誇っているため、多くの韓国会社員は積立(적금:積金)を積極的に利用しているようです。

日本と韓国の若い世代は、物価上昇や高齢化といった共通の課題に直面しています。

こうした将来への不安を背景に、韓国の若手社会人は、多様な金融商品や制度を活用しながら、着実に資産形成を進めていることが伺えます。

〇 韓国人材の心を掴むためには

日本では給与や金銭に関する情報を公にするのはタブーとされがちですが、韓国ではそれらの情報を明確に提示するアティチュードが好まれます。そのため、韓国人材を対象とした説明会では、給料や保険、年金制度などの詳細を積極的に提示することが有効でしょう。

まとめ

いかがでしたか。韓国ではお金が「人生の意味」や「成功の象徴」として重要視され、投資や資産管理への関心が高い文化があります。こうした背景には、歴史的な経済危機や教育が影響しており、日本とは異なる価値観が見られます。「お金」という一つを取っても日韓では価値観が違うものです。

こうした背景や価値観を理解することで、韓国人材とのスムーズなコミュニケーションにつながるはずです。今回の記事が韓国人の採用に貢献できると幸いです。

参考文献

人生で最も大切なものは「お金」…海外移住した韓国人が、母国に帰ってドン引きした「韓国人の拝金主義」 資本主義の悪い側面が強く現れている (2ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

사랑도 가족도 ‘돈’으로 따져…정신건강 황폐한 한국인 | 중앙일보

「時間よりお金が重要」韓国人の答えは圧倒的 : 経済 : ハンギョレ新聞

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