
1月末から韓国や中国などのアジア圏で旧正月が始まり、多くの外国人観光客が日本を訪れたというニュースを耳にした方も多いのではないでしょうか。旧正月はアジアのいくつかの国で重要な祝日とされています。本記事では、韓国における旧正月の基本情報や過ごし方、現代の変化についてご紹介させていただきます。
旧正月の基本情報と伝統的な過ごし方

旧正月は韓国語でソルラルと呼ばれ、陰暦の1月1日(西暦で1月終わり~2月中旬頃)をお祝いする日です。韓国では旧正月が新暦のお正月以上に特別な日で、多くの企業で年末年始の休みは西暦の1月1日のみであり、旧正月の期間が大型連休となります。

旧正月で使われる単語と意味

チャレ
トックク(お餅のスープ)など20種類以上の食事をお供えして、祖先に挨拶をし、感謝の気持ちを伝えるための儀式です。チャレは、儒教の考えを基盤とし朝鮮時代に大きく広まり、現代まで受け継がれ、旧正月だけでなく秋頃の秋夕(チュソク)や名節にも行われます。

チャレサン
チャレをする際にお供えする食事のことをチャレサンと言います。各家庭や地域の習慣によって違いはありますが、チャレサンに用意する食材とその場所は基本的に決められています。また、旧正月のチャレサンに欠かせないトッククは、別名でチャムセビョン(添歲餠)とも呼ばれており、漢字から連想した通りトッククを食べてこそ1歳をとるという意味も持っているそうです。日本でお正月にお餅を食べたり、おせちを用意する文化と似ていますね。
セベとトッタム
新年の挨拶として、両親や祖父母、目上の人にひざまずいてお辞儀をすることをセベと言います。セベを受けた大人は、子供にトッタムと呼ばれる祈りやお祝いの言葉をかけます。チャレが先祖へ挨拶をするのに対して、セベでは身の回りの方へ新年の挨拶回りをするということになります。
セベットン

日本と同じように、韓国にもお年玉の文化があり、セベットンと呼ばれます。セベとトッタムをしたあとに、大人から子供へセベットンが渡されます。韓国の大手リテール企業「ロッテメンバーズ」の調査によると、お年玉を渡す適切な年代については「高校生まで」(34.1%)、「大学生まで」(33.4%)が多く、次いで「就職前まで」(17%)という回答が続き、経済的自立が重要な基準になっているようです。また、年代別のセベットンの金額は、前年とほぼ同様の水準であり、日本のお年玉の金額と比較しても大差はないようです。

*金額(円)は2025年2月時点のレートで計算しており、おおよその金額/出典:ロッテメンバーズ(セベットン、何歳まで、いくらあげればいい?)
お正月の遊び
日本にも凧揚げや羽付といった伝統的なお正月の遊びがあるように、韓国でも旧正月には子供達が伝統的な遊びを楽しむようです。ユンノリ(双六のようなもの)、チェギチャギ(リフティングのようなもの)、凧揚げ、コマ回しなどが代表的な遊びとして挙げられます。最近、世界的にブームを巻き起こしているドラマ「イカゲーム」でも伝統的な遊びが起用されており、馴染みがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
旧正月の贈り物

上の写真は近所のスーパーの贈り物売り場コーナーの様子と筆者が現在勤める韓国企業から旧正月休暇の前にいただいた干し柿の贈り物の写真です。朝鮮時代に、不幸を防ぎ幸運が訪れることを願い贈り物をしていたことが由来とされており、現在では、旧正月に家族や友人、取引先などお世話になった方へ感謝の気持ちとして贈り物をします。韓国の農村振興庁が2024年に700人にオンラインアンケートをした結果によると、「家族に贈り物をする」が約89%、「知人に贈り物をする」が53%とのことでした。また、贈り物として「食品」を挙げた回答者が多く、中でも最も人気なのは、30,000~50,000万ウォン台(日本円で約3,200~5,300円)の果物セットとのことです。会社から従業員にギフトを贈ることも多く、私はワーキングホリデーで勤めている会社から干し柿を頂きました。会社によって内容や金額も様々で、牛肉や油と言った食品関連からデパート商品券を贈呈する会社もあるようです。
旧正月ー現代の変化
海外旅行者が増加中

向かって写真左は2025年1月24日深夜の仁川空港の様子です。仕事終わりにそのまま海外へ行く人で溢れ、手荷物検査と入国審査完了までに1時間弱要した。また写真右は2025年1月31日夜のチェジュ空港内です。国内旅行として人気のチェジュでは、旧正月の終わる頃に帰省ラッシュと雪による遅延が重なり、人がごった返していました。仁川国際空港公社の発表によると、1月24日から2月2日までの10日間で仁川空港の利用客は218万9170人と集計され、過去最多であったそうです。今年は、1月27日が臨時で祝日となり、1月31日も休めれば9連休となったため、これまで以上に旧正月を海外で過ごす人が多くなったようです。また、国会国土交通委員会の発表によると、海外旅行先の乗客数1位は日本(78万9829人)で、2位の中国(39万1635人)や3位のベトナム(34万5818人)と比較して約2倍となっています。
チャレサンの簡素化

写真左は冷蔵のチェレセット<出典:クーパン(https://link.coupang.com/a/ccynEu)>で人数に応じて内容量や種類が異なり、写真右はソルナルやチュソクで欠かせない一品であるコッチジョン(5色のチヂミ)で冷蔵で販売されているタイプです。前途でもご紹介したチャレサンは、日本のおせちのように旧正月の前から準備して全ての食事を手作りするのが主流でしたが、最近では、チャレサンの種類を減らしたり、お店で購入する家庭も増えてきているようです。食品のオンラインショッピング需要の高い韓国では、チャレサンで必要な食材を丸ごと注文できるオンライン商品も幅広くあるようです。また、少人数で過ごす人向けに1~2人前からチャレサンを購入できたり、チャレサンの種類を減らしている方に便利な冷凍食品の商品も販売しているようです。
贈り物の変化

最近では写真のように栄養ゼリーや高麗人参といった健康食品といった贈り物も増えているようです。贈り物として梨やりんごなどの果物やスパムやツナなどの缶詰、肉や酒類の人気は以前として残っておりますが、コロナ以降は健康志向の上昇に伴い、ヘルスケア商品の人気も上昇しているようです。ヘルスケア商品を販売する会社では、旧正月の期間に合わせて、ギフトセットの制作や新商品のリリースをして行っておりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本のお隣の国でありながら、旧正月の時期が毎年変わったり、日本と過ごし方が異なります。情を大事にする韓国人にとって、旧正月の時期に帰省し、家族で集いたいと思う方は多いです。韓国人採用において、企業の福利厚生の一つとして旧正月のタイミングで長期でお休みを取れれば、韓国人人材へのアピールポイントとなるかも知れません。また、旧正月の時期には企業や飲食店はお休みしていることがありますので、渡韓される際はご注意ください。
参考
開成アカデミー韓国語学校:韓国人はなぜソルラル(旧正月)にトックスープを食べる??
開成アカデミー韓国語学校:韓国の旧正月のチャレって何?
TBSニュース:セベットン、何歳まで、いくらあげればいい?
租税金融新聞:旧正月の連休の風景…「お年玉で喜ぶ子どもたち」
ソウル市:韓国の四大名節
忠北日報:農村振興庁、旧正月農食品購入タイプ分析発表 一般プレゼント・農産物は「価格」、畜産物は「品質 」
KOREA net:旧正月の贈り物、感謝の気持ちを込めて
亜州日報:相次ぐ旅客機事故にも旧正月連休海外旅行客218万人「過去最多」
韓国免税ニュース:今年のお正月連休に433万人飛行機利用…昨年より107%↗