韓国人材が日本で困るオフィス用語8選と対応策

江南タイムズが2023年11月に発表した記事によると、韓国では高校の第二外国語として日本語を学べる学校もあり、ある地域では70%以上の生徒が日本語を選択していたそうです。さらに、日本語能力試験であるJLPTの韓国人受験者数も年々増加しており、2024年7月の受験者数は前年比約40%増の約6万6000人に達しました(韓国内の試験会場での受験者数)。  

このように、日本語学習への関心が高まり、日本語力も向上している中で、日本企業の採用担当者が韓国人学生や新入社員と接する際に知っておくべき、ビジネス日本語の難しさについてご紹介します。

日本語人気の高まり

近年、韓国では特に若者を中心に日本語への関心が高まっています。その背景には、どのような理由があるのでしょうか?  

ハンギョレ新聞(2024年1月)の記事によると、『すずめの戸締まり』『THE FIRST SLAM DUNK』『君たちはどう生きるか』といった日本のアニメ映画が、それぞれ557万人、477万人、197万人の観客を動員し、大きな話題となりました。日本のアニメを通じて日本文化や日本語に興味を持つ若者が増えていることがわかります。  

また、2024年の韓国人の海外渡航先ランキングでは、日本が1位に選ばれました(WIKITREEより)。さらに、FNNプライムオンライン(2024年5月)の記事によると、日本を訪れた韓国人の約7割が「また訪れたい」と回答したそうです。大都市や有名観光地だけでなく、日本らしさが感じられる地方都市や自然豊かな地域にも関心が広がっており、それが日本語への注目度の高まりにもつながっているようです。

N1保持者でも難しい日本語の壁

韓国人のみならず、全世界の日本語資格取得を目指す人々が受験する日本語能力試験でJLPTという試験があります。N5からN1までレベル分けがされており、KORECの韓国人人材のほとんどが、最高難易度のN1を保有しています。しかしながら、KORECを通して日本の企業に就職された方にインタビューをしてみると、N1を取得していて日常生活は問題なくすごせていても、実際に日本で働き出してみると日本語がすぐに出てこなく、ショックを受けたという方も少なくありませんでした。

尊敬語・謙譲語、メールの書き方、電話の仕方など、日本語は独特なビジネス言葉が多く、就活中や働き始めたばかりの韓国人人材にとって大きな悩みの種となっているようです。

韓国人材が日本で困るオフィス用語8選

韓国人人材が実際に日本企業の面接を受けたり、仕事をする際、どのようなオフィス日本語や状況が難しいと感じるのでしょうか?韓国語の特徴とオフィス日本語に焦点を当て、韓国人材が日本のビジネスシーンで困る日本語の表現を8個ご紹介します。

①メールの書き方

挨拶の種類の多さ

韓国語は「こんにちは」で始め、すぐ本題に入ることが多いですが、日本語は状況に応じて様々な挨拶の言い回しがあるため、韓国人人材はボキャブラリー力が必要となります。

日本語例

・お世話になっております。

・突然のご連絡失礼いたします。

・先日はありがとうございました。

謙譲語と丁寧語の使い分け

日本語のビジネスメールでは、日常生活ではあまり使わない謙譲語や丁寧語を多く使います。そのため、日本語会話に慣れている韓国人人材にとっても謙譲語と丁寧語の使い分けが難しく感じることがあります。

動詞謙譲語丁寧語
見る拝見する拝見いたしました
行く伺う伺います

結びの種類の多さ

韓国語では「ありがとうございます。」で簡単に締めることが一般的ですが、日本語では挨拶の言葉にも種類が沢山あるように、結びの言葉に多くのパターンがあります。韓国人人材が、相手との関係性や状況に応じて言葉を選ぶことは少し難しいでしょう。

日本語例

・何卒宜しくお願いいたします。

・今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

・お忙しいところ恐れ入りますが、宜しくお願いいたします。

②電話の日本語表現

「もしもし」をビジネスでは使わない

韓国語では「もしもし」を日常会話やオフィス会話問わず使いますが、日本語では「もしもし」を使わずに挨拶から始まるため、ビジネス電話に慣れていない韓国人人材は少し違和感を感じる可能性があります。

日本語例

・お世話になっております。

・大変お待たせいたしました。

・〇〇会社の〇〇です。

クッション言葉の使い方

韓国語は日本語よりも比較的ストレートに表現するため、相手への配慮を込めた日本語のクッション言葉の曖昧な表現は韓国人人材にとっては理解したり、使いこなすのに戸惑うことがあるかもしれません。

日本語例

・恐れ入りますが

・差し支えなければ

・せっかくですが

電話を切る時のマナー

切る時の挨拶で日本語と韓国語の間に大きな差はありませんが、日本ならではのビジネス電話のルールに知らなかったり、慣れていない場合があります。

マナー例

・電話をかけた方が先に電話を切る。または、相手が目上の人であれば、相手が電話を切ってから切る。

・固定電話の場合、受話器を静かに置いたり、受話器を置く場所にあるフックを指で押さえる。

③ザ行の発音

韓国語には「ザ」行の発音がなく、「ジャ」行の発音になる方が多いです。

日本語韓国人がよくする発音
カゾク(家族)カジョク
ゼンゼン(全然)ジェンジェン

④ツの発音

韓国語には「ツ」の発音がなく、「チュ」に近い発音になる方が多いです。

日本語韓国人がよくする発音
メンセツ(面接)メンセチュ
セツメイ(説明)セチュメイ

⑤長音の発音

韓国語には長音の発音がないため、短く切った発音になる方が多いです。

日本語韓国人がよくする発音
シリョー(資料)シリョ
トーキョー(東京)トキョ

⑥日本独自の和製英語

和製英語は元々の英語と意味が異なったり、韓国では一般的に使われていない言葉であったりするため、韓国人人材には理解が難しい可能性があります。

日本語由来理想の言い方
アポ英語の省略アポイントメント、(面談の)約束
アンケートフランス語調査
クレーム英語で「強く主張する」苦情

⑦呼び方や名字の種類の多さ

会社での呼び方

韓国では、職場で名前を呼ぶ際、フルネームや名前に「さん」や役職名を付けて呼ぶことが一般的です。しかし、日本では「さん」「先輩」「君」「ちゃん」、名前+役職名やあだ名など、呼び方のパターンが韓国よりも多様です。そのため、韓国人にとっては日本での呼び方のバリエーションが多く、戸惑うことがあるでしょう。

名字の種類の多さ

韓国の苗字は約250〜290種類と言われている一方で、日本には約30万種類の名字が存在すると言われております。そのため、韓国人人材にとって日本人の名前を覚えるのも難しく、社内での呼び方も様々あるため、より一層複雑に感じるかもしれません。

⑧言葉の繰り返しを避ける

日本語では、単語や述語の繰り返しを避け、類義語や異なる言い回しを使う傾向がありますが、ボキャブラリー力が必要なため、韓国人人材にとっては、使いこなすのが難しく感じるようです。言葉を繰り返すと、話が聞きずらかったり、稚拙に感じられ説得力に欠ける印象を与えてしまうことから、面接や自己PRでもこの点を気をつけている韓国人人材は多いようです。

例:「すみません」の類似表現

・申し訳ございません

・失礼いたしました

・お詫び申し上げます

丁寧に教えて欲しい日本語表現  

韓国人に限らず、外国人にとって難しい日本語表現を踏まえ、日本の企業の皆様に注意していただきたいオフィス日本語表現を、例文とともにご紹介いたします。

まとめ

いかがでしたでしたでしょうか。日本人にとっても難しいと感じる人も多いN1に合格している韓国人人材でも、実際のビジネスシーンでは、曖昧な表現や独特なビジネス表現など、日本語特有の難しさに直面することがあります。そのため、企業の皆様が明確で分かりやすい日本語を使用することで、韓国人人材との円滑なコミュニケーションを促進できると考えられます。

参考文献

江南タイムズ:なぜ韓国の高校生は第二外国語に日本語を選ぶのか、学習人口増加の意外な理由とは?

日本語能力試験JLPT:日本語能力試験 2024 年 7 月試験 実施概要

ハンギョレ新聞:こっそり見ていた日本アニメ、どのようにして韓国のMZ世代を魅了したのか

WIKITREE:「韓国人が最も多く訪れた旅行地」3位中国、2位ベトナム、1位はまさに…···

FNNプライムオンライン:韓国のZ世代「2030」は日本嫌いでも日本旅行ブームの都合のよさ…韓国社会に根付く“持論もどき”と実態の矛盾

KORECコラム:日本企業に就職したKOREC卒業生の今

KORECコラム:日本企業に内定をもらった韓国人学生へのインタビュー 第十弾!

KORECコラム:韓国人の姓名について