
韓国人材を「採用できたから成功」とは限りません。日本語がある程度できても、職場文化やコミュニケーションの違いに戸惑うことが多くあります。だからこそ、採用後の“オンボーディング”が重要です。しっかりとした準備とフォローは、韓国人人材の定着率の向上だけでなく、チーム全体の生産性や信頼関係の構築にもつながります。今回の記事では、韓国人人材を迎える企業が押さえておきたい、オンボーディング時のポイントをご紹介します。
オンボーディングとは?

オンボーディングとは、新しく採用された社員が職場にスムーズに馴染み、力を発揮できるよう支援する一連のプロセスを指します。本記事では、採用決定の段階から、本格的に業務へ取り掛かれるようになるまでをオンボーディングの範囲と捉えます。韓国人人材の場合、ビザ手続きや住居など生活面での支援に加え、業務内容やビジネス日本語、職場の文化に早く慣れてもらうことが非常に重要です。採用から定着、そして戦力化に至るまでを一貫してサポートするオンボーディングは、離職リスクを下げ、組織への信頼感を高めるうえで、欠かせない取り組みといえるでしょう。
外国人労働者が日本で働く時に困ること

まずは韓国人に限らず、外国人労働者全体を対象とした調査結果をご紹介します。
株式会社ASIA to JAPANが実施した「日本で働く外国人材に関するアンケート」によると、「日本で働く前に知っておきたかったこと」として最も多かった回答は「特になし」でしたが、それに次いで多かったのが「日本のビジネスマナーや仕事観など」、「日本での生活について」でした。
日本で就業する多くの外国人の中には、日本の文化や言語にある程度慣れていますが、それでもなお、事前に職場文化や生活ルールについてもっと知っておきたかったと感じているようです。
また、「日本で働き始めた当初、最も困っていたこと」という質問に対しては、「生活に必要な手続き(役所・銀行・携帯など)」が最も多く、全体の34%を占めました。
業務外の内容ではありますが、企業としても生活に関わる契約や手続きについて、資料配布や積極的に情報収集をするなど、可能な範囲でのサポートができると良いでしょう。

PR times:
日本で働く外国人労働者171名を対象に「日本で働く外国人材に関するアンケート」を実施
一方、企業側の視点から見た課題についてもご紹介します。
神田外語学院が2024年に外国人人材を採用したことのある企業を対象に実施した調査によると、「外国人人材を採用した後、どのような課題を感じたか」という質問に対し、最も多かった回答は「社内のコミュニケーション」でした。

言語や文化の違いにより、意思疎通やチーム内の連携に難しさを感じる企業が多いことがうかがえます。採用後の定着や活躍のためには、外国人人材本人だけでなく、受け入れ側である日本人スタッフへのサポートや理解促進も進められると良いかもしれません。
PR Times:【外国人材の採用のリアル】各企業で外国人登用が促進される一方で、社内コミュニケーションに問題あり
オンボーディングで韓国人材の心を掴む5つのポイント

外国人人材にとって、日本企業で働く際の不安は少なくありません。一方で、企業側も文化や言語の違いに戸惑うことがあります。双方の悩みをふまえ、韓国人材の心を掴むために企業ができるサポートを、5つのポイントにまとめてご紹介します。
①不安を取り除く【ビザサポート】
外国人就労手続きの手引きと事前の情報共有
在留資格(ビザ)申請の流れや必要書類、企業側が主導となり、スケジュールを事前に丁寧に共有することで、本人の不安を軽減できるでしょう。
銀行、住居、通信など生活インフラの支援
日本での生活を始める際に必要な銀行口座の開設、住居探し、携帯契約などのサポートも重要です。外国人に対応できる窓口や多言語案内を事前に調べておくと、入社後の定着につながります。
KORECコラム:外国人就労手続きの手引き
② 【言葉と文化の壁を乗り越える】業務サポート
社内用語や業務マニュアルの言語対応
社内で使われる略語や専門用語、日本特有の言い回しは、日本語に慣れている韓国人人材にとっても理解が難しい場合があります。マニュアルや研修資料に理解しやすい日本語や母語で補足することで、理解度が高まり業務も円滑に進むでしょう。なお、韓国人の新入社員にマニュアルの補足をさせる方法もおすすめです。自ら補足することで理解が促されますし、次年度以降の新入社員にも活用させることができます。
③【孤立を防ぐ】入社前面談とメンター制度
OJTの有無や期間/メンター制度/週1回の1on1ミーティング実施状況
韓国人人材が孤立しないためには、入社後すぐに相談できる体制づくりが重要でしょう。OJTやメンター制度などを通じて、業務だけでない面についての不安や悩みも相談できる場を設けると良いでしょう。この取り組みは、韓国人だけでなく、日本人も含めた新入社員にも効果的です。OJTの仕組み化は早期離職防止や早期戦力化にも効果があると言われています。
メンターやスタッフに異文化理解研修を受けてもらう
韓国人人材と関わるスタッフが、文化的背景や仕事観の違い、言語に関するつまずきやすいポイントを理解しておくことは、信頼関係の構築に大きく役立つでしょう。簡単な異文化理解研修などを設けておくことで、受け入れ側もより効果的なサポートが可能になると考えられます。韓国の場合は、他国に比べて文化や価値観の違いは比較的少ないため、大掛かりな研修は必須ではありません。とはいえ、簡単な異文化理解の機会を設けることで、受け入れ社員が「文化は違う」という前提を理解でき、スムーズなコミュニケーションにつながります。さらに、将来的に他国からの人材を受け入れる際にも、良いベース作りとなるでしょう。
KORECコラム:韓国人材から注目される⁉︎求人情報に盛り込むべき5つのポイント
④【社内に馴染む工夫】イベント・雑談の場で“仲間意識”を育てる
歓迎ランチ/ミニ交流会の実施
韓国人人材が社内に溶け込めるよう、業務外で軽いイベントを行うといいでしょう。昼休みや業務後に小規模な交流の場を設けることで、コミュニケーションが生まれ、新たな一面を知るきっかけになるかもしれません。韓国人はグループで食事をする文化が根付いており、仕事終わりにお酒を飲みに行く習慣もあります。ひとりで食事をすることはあまり一般的ではありません(最近は少しずつ広まってきています)。もちろん個人差はありますが、多くの場合、一緒に食事をすることは歓迎されやすいでしょう。
無理に飲み会に誘わない、文化的な押しつけを避ける
韓国人人材に対しても、飲み会や日本独自の慣習を強要せず、業務外のイベントへの参加は任意とすることで、本人のペースを尊重した関係づくりが可能になります。
⑤【文化の違いを理解してもらう】説明
職場での文化の違い(服装・返信スピードなど)
韓国では、日本に比べて服装がラフであったり、連絡手段としてチャットやカカオトークを利用し、返信も即レスでするのが一般的です。そのため、職場の価値観やスタイルは、あらかじめ共有しておくようにすると良いでしょう。
“伝えなくてもわかる”という日本的価値観の見直し
日本特有の“察する文化”は、海外で暮らしてきた人材には伝わりにくいです。社内のスタッフが言葉で1つ1つ説明する習慣を持つことで、業務上のコミュニケーションミスを防ぎ、相互理解のある関係性を築くことができるでしょう。
KORECコラム:韓国人人材と良好な関係を築く6つのポイント
KORECで採用された方の実際の声
【韓国人材の採用企業インタビュー】ダイドードリンコ株式会社 様
今後は、外国人採用の中で在留資格などの手続き関係でかなりの時間がかかりそうだと危惧しています。外国人労働者は毎年増え続けていますので、手続きの関係で採用してから働いていただく時期が想定よりもずれ込む可能性も考えておく必要があります。
在留資格手続きに時間を要することもあるため、企業は制度をよく理解し、韓国人材が不安を感じないよう丁寧な対応と準備を心がけることが大切でしょう。
【韓国人材の採用企業インタビュー】株式会社GA technologies様
私がプログラミングを学んだのは大学3年生からで、他の人よりも知識やスキルが劣っているのでは?と不安でした。ところがGAは選考途中に1ヶ月間の研修体験プログラムがあり、さらには、内定承諾後から入社までの期間(約1000時間/個人差あり)で独自の研修システム「GA BootCamp」が組まれているので、しっかり勉強して入社することができました。
韓国人人材は言葉だけでなく業務面でも不安を感じることがありますが、選考中や入社後に研修制度があることで、安心して新しい環境に挑戦できるのではないでしょうか。
【韓国人材の採用企業インタビュー】株式会社k-Hack様:後編
Q.実際に働いてみて、それまで抱いていたイメージの違い、ギャップなどありますか?
楽しく生活できています!事前に詳しく街のことを教えてもらえたことも安心でした。入国した際に、社長が空港まで迎えにきてくれたのに感動しました。大切にされていることが実感できましたね。日本では助けを求めにくい場面も多いため、韓国人人材にとって企業の献身的なサポートは大きな支えと安心感につながるでしょう。
まとめ
韓国人人材の採用後は、仕事だけでなく生活や文化面でのサポートが欠かせません。継続的にコミュニケーションし、言語や価値観の違いによる戸惑いを減らし、安心して働ける環境を整えることを心がけましょう。本記事でご紹介したオンボーディングのポイントをぜひ参考にして、多様な人材が活躍できる職場づくりにお役立てください。